第七話

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 田中さんと連絡を取りながら病院へ、杉社長に連絡、ほどなく病院へ相田社長たちが駆け込んできた。 「こんなことになるなんて」 「こちら、相田社長と副社長の奥さん」 「ありがとうございました、それで可憐は」  風呂場にいて、俺達が二階に行くと追いかけてきた、だが亜美ちゃんが外に出て、田中さんの声が聞こえたら急におとなしくなって、また風呂の中へ入ってしまったようだ。  治療室の中には、田中さんが入っている。 「あの、失礼ですけど、あの田中さんて、まさか」 「気がつかれましたか、あの子は、可憐の子です」 「やっぱり、だけどあの子はそれを隠してる、何故ですか?」 「あの、この話と関係あるんですか?」 「まあ、あんたらが話したくないのもわからんでもない、だがな、心の問題は、細い糸をほぐしていかんといけない時もあるんじゃ、俺らは、あんたらの依頼を聞くだけだからこれ以上の深入りはせん、あんたらがすればいい話だからな」  じいちゃんの話はもっともだ。 「それに私達が受けた依頼は、あのゴミの撤去です。ですが社長さん、ごみは一時的になくなっても、彼女を救えるわけではありませんよ」 「汚部屋はエンドレスなんです、本人の強い意志が無ければいつまでも繰り返す」 「そういうのはほとんどが一人もんじゃ、だが彼女には二人の子供がおる、力強い身内がな、目を覚ました様じゃな」  ガチャりと扉が開いた。 「大上さんお願いします、亜美ちゃんが、パパだって言い張ってて」 「いってやれ」  じいちゃん・・・。 「役に立てるんだったら使ってもらえ」  ばあちゃんまで。 「ほらいけ」  マスクとこれをつけてくださいと手袋が渡された。  透明なカーテンを開けた。  酸素を送るチューブがほっぺたにテープで貼られている。  綺麗になった肌には、真っ白くなるほど薬を塗られている。 「パパ、来てくれたんだ」  震えるか細い声で手を伸ばしてきた。 「よくがんばったな」  抱きしめた。かわいそうに。 「うん、パパがお迎えに来てくれると思ってずっと空を見てたんだよ」  え?確か相手は一般人だったよな。田中さんの方を見た、口で、どうなってるんだと聞いた。  耳元で言う。三年前、再婚して、海外へ移住した。 「俺は似てるのか?」 「いえ、ただ、年齢的に近いのかも、後煙草の匂い」  はー、そういう事か。こんなときこの老け顔が役に立ったわけね。  手を握り、にっこり笑った。かわいそうに、何でこんな目にあったんだろう、腕に着いた紫の痣を擦った。 「寝てもいいよ、ここにいるから」 「うん」  そして、俺は、彼女に聞いた。 「君は、亡くなったお母さんと可憐さんが親友だといった。それ以外に何か聞いているかい?」 「・・・はい」 「それは社長さんたちも知っていることだね」 「はい」 「それは可憐さんもわかっていることだね?」 「・・・はい」 「そうか、田中の姓は、亡くなったお母さん?」 「はい」 「ありがとう」 「あの?」 「わかってる、この子には・・・みんなに内緒なんだよね」 「お願いします」 「わかった」  外では、これからの話が進んでいた。警察も来て一応の話はしたそうだ、虐待だからな。でもそこは爺ちゃんたちがうまく話し直ぐに帰って行った。 「頼れるものがいないんです」 「こればかりはな」 「病院に入れましょうか」 「そんなこと何の解決にもならセンワ」 「オヤジ、じゃあなんかあんのかよ」  彼女が女優だという事を忘れていないかという。 「母親を演じさせるんじゃ、普通の母親を演じさせてそれを一生演じて生きていくように仕向ける」 「そんな」 「だから荒療治なんじゃ」 「演じさせて戻るものでしょうか?」 「こればかりは、あの二人に手伝ってもらわないとな」  大きなガラスの向こうで手を握る姉妹をみんなが見ていた。  明後日、決行、その前に、今社長さんたちが台本を作っているのだという。 「台本…うまく行くかな?」 「だからみんな頑張ってるの、あの子の幸せのために」 中では目覚めたのか、こっちに手を振っている。 「奥様、今晩も父親役をしにきても構わないですか?」 「そうですね、ここは旦那様に一肌脱いでいただきましょうか」 「中へ入ろう」 「これ、持って行くんでしょ」 パネルを持って中に入った。
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