第九話

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第九話

 俺は可奈さんの話を手帳に書いていた。  可憐とアイドルグループにいた俳優Aは結婚しなかった。まだ十代だった可憐のほうが売れっ子で、周りが結婚を許さなかった経緯がある。だが可憐は秘密裏に子供を産んだ。丁度その時入ってきた海外での大きな仕事、可憐は仕事を取った。  可奈と育ての母親、田中亜由美、芸名田中奈美。幼馴染の彼女、女優としては今一つで、可奈を育てると同時に引退をした。この子の名前が二人の女性の芸名なのでは?と思って聞いていた。  俳優Aは可憐との恋人としてそれなりに売れたが、雲泥の差。どんどん仕事がなくなり、芸能界でも名前すら聞くことがなくなる。そのことをネタにしようと、亜由美をゆすり始める。  二人の母親は必至で可奈を守った。  そして可憐は一般男性と結婚。子供は作らなかった。  それは可奈さんのことを思って。幼い時、さんざん俳優Aに脅され怖い思いまでした。また繰り返すのではないかとどこかで思っていた。  大親友、亜由美が病に倒れた。  可奈のことはもういい、自分の幸せをつかんでと、可憐は女の子を産んだ、大親友の名前を取り、亜美と名付けた。その後亜由美はこの世を去った。 亡くなった母親がそこまでして他人の子を育てるだろうか? 加奈ちゃんはそれについて答えてくれた。 可憐は両親が事故死したことで、あちこちたらいまわしにされた挙句、亜由美の家のそばにあった保護施設に預けられる。 いじめは壮絶で、彼女を守ったのが亜由美の家族だそうだ。 二人は大きくなったら東京で歌手になると夢見ていた。 中学生になり、可憐は、保護施設を出なければいけなくなった。 二人は意を決して東京に行く。 そこで可憐は運よく相田さんに拾われ芸能人として頭角を現す。 ただ亜由美は今一で、一度田舎へ帰り高校生となる。 ただ可憐はその間も二人で過ごす場所を見つけ、彼女の後押しをする。 二人仲良く、安いアパートでずっと一緒に過ごしたそうだ。 「母はよく可憐ちゃんには恩があるといっていました、それは聞くことはなかったけど、大事な人だとも言っていて」 亜由美さんのご家族は? 「それがよくわからないのです、たぶん、母の方の親もいないのではないかなと思うのです」 そっか。可憐が何もできないのは家庭環境もあるかもしれないな? トントン。 手帳を閉じ、ドアを開けた。 「こんばんわ」 社長の奥さんが来てくれた。彼女は副社長だ。 「あら、寝ちゃってる」 つかれているんです。可奈ちゃんは長椅子に眠っていた。 「毎日すみません」 どうですかそちらの様子は? 「はい、最高の、花道だと思います」 「そうですか。あの、俺、本職は、カメラマン何です」  社長から聞いた、記者をなさっているそうですねと。藍染さんの話も聞いたそうだ。 「あなたなら、任せてもいいと主人も言っています、どうか、この子たちを、幸せにしてあげる手伝いをしてあげてやってください」  俺に頭を下げる。 「あ、いや、お顔を上げてください、俺、そんな大したことできないし」 「それでも、亜美ちゃんはあなたに信頼を寄せてます。それにこの子も、安心して寝ている、他の雑誌社に変なことをかかれるくらいなら、先に、スクープをお渡ししたほうが、私達も、可憐本人もいいかと」 「そう言っていただけるとありがたいです、いい記事にします」  パネルを手に取った。 「これ、あなたがとったもの?」 「はい、亜美ちゃん、俺の事、空から来たって言ってたので」 「オナガね」 「そんなに珍しいものじゃないんでしょうけど」 「でも綺麗」 「ありがとうございます」 社長の奥さんと代わった。また明日来ますと言って。
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