第一話

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 北海道から出てきて東京の三流の大学を卒業。この部屋はその時からずっと住んでいる。安い場所を探し東京では無理と隣の県を探しここに行きついた。 長男だった俺は、まだ下に三人もの兄弟があるというので、いずれは上京してもいいように、小さなワンルームとかじゃなく普通の3LDKを購入したのだ。 もしもの時は売っても貸してもいいということで、俺がここへ来てから、親戚だなんやかんやで部屋を貸し、親は荒稼ぎした。 見たこともない親戚というのがしっかり四年間住んでいったりもした。 まあ元は取ったのか、今じゃそんなのは着ることもなく、ローンは俺の物になって、返済していくしかないが、まあ俺の城ではある。 まあ、女もいなかったわけじゃないけど、仕事柄か、この容姿だからかいいたかないけど自然消滅が多かったと言っておこう。でも、俺はこいつと出会ってよかったと思っている。うん!  妻、千晶、二十七歳になる。見た目、高校生、下手すれば小学生にも見えかねない、ボーイズガール、中性的な顔はかわいらしい男の子に見える。  俺達は、千晶の勤める、叔父、杉スタッフサービスが、俺の下の住人から依頼を受けたことで知り合った。  チリン、チリンという風鈴の音に誘われ、外にカメラを向けた。 「お前らも美人ぞろいだ」  そして、こいつら(翁長)が俺たちの恋のキューピッド。   カショカショカショ。  カメラの手入れをして。ゆっくり過ごす。また明日からはうるさいデスクの下で言い争いだ。  さて、そろそろ昼だな。  彼女と出会ってちょうど二年、やっと落ち着いてきた。  半年結婚を待ったわけ?半年も待っていない、入籍は、千晶と決めた四月一日、絶対忘れないでしょと言われ、みんなにはエイプリルフールで騙されたんだと散々いじられたが、亡くなったお母さんの誕生日でもあるのだと知っているから俺はこの日でいいと決めたんだ。お祝い事は待ってほしいと言われていた、せめてお盆が過ぎるまではと。でも、ばあちゃんはいつ死ぬかわからないから早くしろと言われ籍だけ入れたのだったけど、まあ、いろいろあってこの日になった、そこは我慢してもらった。  ただ同居というか、住むところはやっと今になって俺のところから通い始めた。夜は俺のところに帰ってくるし、まあ俺も家を空けるからそんなときはばあちゃん家に彼女はいるわけで、行ったり来たりだけど俺もそれを楽しんでいるところがある。  弟たちが来ていなかったらたぶん同居していたんだろうけれどもな。  つっかけを履いて、ジーパン姿、いつもはスエットで寝るのも出かけるのも一緒だったけど、それじゃああんまりと千晶に言われ着替えるようになった。 公園を突きっると近所のがきんちょたちに出くわした。 「やくざだ!」 「杉の親分だ」 「テメ―らシバくぞ!」   ワー!!!  これも慣れた、そう、社長の息子たちのかよう学校の子達だ。まあ、これも楽しんでいるところがある。  幼い時近所のダチとこんなことをいって大人に置き換えられた、時代は変わっても子供のやることは変わらない、走り回る子供たちにこの国はこの先も平和だと思えたのだった。  俺の小さいときのあだ名はとにかく、犬系が多かった、ブルドッグだのチャウチャウだのまあ顔がくしゃっとなってしわの多い顔は爺みたいでそういうあだ名が付きまとう。 高校からは、不細工の象徴みたいに言われたが、悪意は感じなかったな。仏間に飾ってある先祖の顔はどれも同じだし、まあ、テレビに映る人たちは世界が別だと思っていたから、何を言われても平気だった。でもなーブサメンはねえよな。会社では、女性社員が言った言葉で俺は今呼ばれることが多くなった、まあ、じじい(編集長)のせいでもあるんだけどな。 そして、千晶に言われた。 ブルテリア、可愛いでしょうだって、怒ったら、犬に悪いわよと言われ、俺の自尊心はボロボロになった。 でもそのあと大好きよと言われたらねー、でへへへ。  商店街の中を歩く。  そろそろ夏休み、この商店街も学生がぐっと減る、だが夏祭りがあるせいで、ひっきりなしにお囃子が流れている。  七月か、梅雨も終わりだな。 「よう晃、ばあちゃんちか?」  八百屋、俺が買ったことはない、いつも荷物運びだ。 「ウス、昼飯食いに」 「昼飯か、これもってけよ」 「いいんすか?」  もってけとトマトをもらった。  有難いね。 「晃君、婆ちゃんのとこ?」  隣の和菓子屋。ここもそう、誰かと一緒。  もってけに手を出した。 「はい、すみません、いただきます」  十年以上もここに住んでいて、こんな多くの人に声を掛けられたことは一度もなかった。これも千晶のおかげ。 「よ、まいど」 「いらっしゃい」 という声は聞いて小気味がいいものだ。
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