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第三話
まてー!
弘一は、裏口から入り、長い廊下を店先の方へと走って行く。
ベーダ!
ドン!
「イッテー」
「いてえのはこっちだ!」
仁王立ちの社長に体当たり。
「とおちゃん」
「捕まえたー」
首根っこを捕まえた。
「離せ!」
「また何やらかしたんだ?」
「何にもしてねー」
「減らず口ばっかり叩いて、根性叩き直してやる、誰がやくざの親分だって?」
「ハハハ、だってねえ、ぷー」
なに笑ってんだ、ゴンと社長に頭を殴られていた。
「まったく、晃、ちょっといいか?」
「え、あ、はい」
仕事の話だという。
事務所へ向かった。今日は休みで誰もいないのか、並んでるサンダルを履いて、ソファーに腰かけた。「これなんだけどな、俺はこういうところの事は疎くてさ、ただ、ダチなもんだから助けたいとは思うんだけどさ」
依頼内容の書かれた書類を見せてくれた。
社長の友人は、某プロダクションの社長で、タレントを多く抱えているところで有名だ。そのつてで、こうしていろんなところの仕事をさせてもらっているという。
今回の依頼は?
「んー、これねー、んー」
悩む、最近こんなのばっかりだ。この頃は、薬だの、不倫だの、明るいニュースが少ない。
「俺はやめた方がいいと思う」
「やっぱりな」
「話は聞きに行かれたんですか?」
「それがさ、俺だけだとどーも騙されるというか、情に流されるというか、うまいように使われちゃってさ、だから、母ちゃんか千晶に行ってもらってるんだけどさ、二人とも忙しくて」
「じゃあ、俺が付いていきましょうか?」
「いいのか?」
その代わりと手をこ招いた。
「仕方がねえ、売ってやるよ」
あざーすっ!
俺は杉の制服のつなぎを着て、社長はスーツに着替えた。
準備万端、二人で、依頼者の所へと向かった。
依頼主は、相田芸能プロダクション社長、内容はある女優の子供の面倒を見てほしいとの依頼。
年齢は十歳、女の子。
親なんだから自分でどうにかしろって言うのが本当なんだろうけど、こういう家庭は複雑だ。だから安請け合いしない方がいい、なんて言ったって、その後の影響は計り知れないからだ。
「都心じゃないんですね」
「そうなんだ、歩きじゃちょっと距離はあるけど、車なら近いだろ」
「珍しいですね?」
「そうなのか?」
「ええ」
芸能人は仕事柄都心に住みたがるここはそこに比べたら隣の県だ、ましてや俺たちの住んでいる埼玉県。
「この辺だな」
「ここが八だから、その隣ですかね」
結構近くてびっくりした。
もうそこは東京都だ、環境はいい、大きな一軒家も多い。
「ここかな?」
車を置いて探すかという事になった。
この辺かな?
あそこか?
なんか、あの女優にしちゃ、普通というか地味だな・・・くんくん。
なんかにおう?俺もそうだが、一か月近く置きっぱなしのごみの匂い。それがだんだん近づく鼻が曲がりそうなくらいきつい匂いになってきた。
「こりゃ、まずいぞ?」
「なんすか?」
「汚部屋だよ」
「あの、汚い部屋の方ですか?」
「覚悟した方がいいな、ちょっと待て、車からタオルとかもってくる」
あの女優が汚部屋?考えられない。
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