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第六話
社員たちが前に座った総勢十五名、年齢は十九から六十五までみんないろいろあってここに就職している。この人たちは、又後かな。バイト、パートさんもいる、その人たちを入れれば総勢七十人近くなる、大きな会社だ。
社長の話が始まった。汚部屋(ゴミ屋敷)は、近所にあまり知られないようにすることが条件、だから片付けはスピードが命。 大人数で、物をすべて撤去、違う場所で分別、その後、お金や金目の物、大事なもの、必要な物をすべてかえす。ただし、すべてがなくなり不安になって、またゴミを集めて来る人もいる。そんなときは収集癖があるので、ぬいぐるみなんかを大量に置いたりするのだそうだ。
その段取りが今はなされている。
ここ一週間の仕事の関係、人数、車の手配、場所の確保そんなのが話し合われて行く。
「かわいそうに」
「こんなに痩せて」
「お母さんが好きなんだろうね」
俺の撮ってきた写真を見ていた。
「なあ、これ、なんだろう?」
「リングじゃね」
「鬼みたいだね」
「本当に可憐なのか、怖いね?」
後ろで話す、尚と祐。
「リングはなんに見える?」
小さな声で訪ねた。
「これ、紐みたいに見えるけど、もしかしたら手錠?」
子供の写真をカラーコピーしたものを指さす。見えなくもない、うつろな目で俺のほうを見つめているようにも見える。
「手錠じゃと!」
地獄耳だな。
「なんか言ったか?」
言っておりません。
「そんなのでつながれておったら、この子は・・・努、早く何とかならんか?」
「なんだよ急に」
「この子が危ないんじゃ」
「わかってるよだから今その話」
「そんなんじゃねえ、明日、そこ連れてけ!」
話は急展開になりそうだ。
社長たちは、オファを取って、明日、早い時間に向こうの社長に会う約束を取り付けた。
そして俺は・・・はあ?
「俺だって、仕事!」
「何が仕事じゃ、毎日煙草ばっかり吸いおって、連れてけばお前だってそれなりのもんが手に入るじゃろ?」と幸助爺ちゃん。
そりゃそうだけど・・・。
「何も一日付き合えとはいっとらん、そこに連れて行くだけでいいんじゃ」と、リン婆ちゃんまで、もう。
「わーかったよ、でも一回社に出てからだカンナ」
「努、一台車貸してくれ」
「運転は?」
「晃がおる」とトメばあちゃん
「はー、ばあちゃんどこ行くんだよ」
「決まってるだろ、幸ちゃんとおりんちゃんと行くんじゃ」
「はあ?ジジババで行くっていうのか?」
「こいつ馬鹿にしちょる」
「あのですね、いいですか、これはくれぐれも」
「ロク、お前の話はいい、俺らはこの子を救出するだけじゃ」
「社チョー」
「好きなようにさせとけ、まったく、晃、すまねえけど頼むわ」
「がんばってね」
「千晶ー見捨てるなー!」
日にちは、明日の話し合いで、決める、みんなはいつでも動けるように、仕事を残さないように片付けておくことだけ言い渡された。
俺たちは家へと帰った。
「何考えてるの?」
「いやな、あの、有名女優がなんで引きこもりなんかと思ってさ」
「有名だからでしょ?」
「なんでよ」
子供がごみ出しをしていた。女のくせにとか、いろんなことを言われたとして、外に出るのが怖くなる。自分は女優、だからごみなんか出していいわけないのよという高飛車な自分と、母親として、ちゃんとしなきゃという葛藤が心のバランスを崩す。
「そんなもんか?」
「女はデリケートなの」
「そんな時ばっか」
「あーそういうこと言う」
「いうね、デリケートな奴が、ゴキブリ素手で捕まえてケラケラ笑うか?」
「はー?その手を嘗め回して、好きだーって言ってる変態親父はどこのどいつなんでしょうね!」
「そういうとこがデリケートじゃねーんだ!」
「ばっかじゃない」
「あー、どうせ馬鹿ですよ!」
「バーカ、バーカ」
「くそ、頭きた」
なんで走るのよー!
先にかえってベッドにもぐりこんだ。
「ごめん」
「・・・」
「もう、おやすみ」
ごそ、ごそ。とベッドに入った。
「何やってんのよ!」
「変態親父の技みせようと思って」
「技って、もう」
「いいよねー」
「キャッ」
「もう、かわいい声出しちゃって」
千晶の小さな体を抱いた。
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