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「お前、酒そんなに強くねーだろ」
「ふぇ?」
「顔、真っ赤」
酔い冷ましに寄った公園で、適当なベンチを見つけて座った。足をどかっと広げて座る彼。そのせいで、私の場所はとても狭い。
(前にもこんなことあったな……)
だけれど、あの時よりも明らかに心拍数が上昇している。
「……あのさ」
「?」
「あそこのケーキもうまかったけど、お前のアップルパイ、食べたい」
小さな声でそう言った彼は、ふいっと顔を反らした。
「でも、あれは……」
「颯斗と作ったんだろ。そうじゃなくて、お前の」
「私の……?」
「佳英の作ったアップルパイ、食いたい」
「え………今……」
見上げた彼の顔は見えなかったけれど、その耳は赤く染まっていた。
「……あんたも、耳まで真っ赤じゃん」
「てめえバカにしてんのか!」
そう言いながら振り返った彼の顔は、思ったよりも赤く染まっていて、私はふふっと笑った。
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