3 ブラックコーヒー牛乳

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「佳英ちゃんさあ、そんなにアイツに会いたいなら会いに行けばいいじゃない。ほら、隣の部屋のドアの前に向かって、ピンポ~ンって……」 「ちょ、待ってください、別に私はキャラメル男のことなんて何とも……」 「思ってないわけないでしょ。顔に書いてある」  受け取りカウンターの前で、颯斗さんが私のおでこを小突いたから、私はあわてておでこを押さえた。 「本当に書いてあるわけないじゃ~ん」  颯斗さんがそう言って笑うから、私の頬はジンと熱を上げた。 「ブレンドコーヒーとキャラメルマキアートお待ちのお客様」 「はいはーい」  彼はそれを両方受け取ると、さっさと奥のソファ席へ向かう。 「ほら、おいで!」 「は、はい……」  彼の向かいにちょこんと腰を下ろすと、彼は私にキャラメルマキアートをはいっと手渡した。 「それ、雄嗣みたい」 「あはは、ですね~」  おもわず苦笑いをした。そんな私を見た颯斗さんは、ははっと笑った。 「颯斗さんはブラックで飲むんですね」 「うん、そうそう」  彼は両手でカップを包むと、そっと一口すすった。その仕草はとても綺麗で、だけど私の口からはそんな感想は漏れなかった。 「あの人は絶対にそんな飲み方しないな……」  颯斗さんはカップから口を離すと、こちらを見据えて微笑んだ。 「そうそう。あいつは、ブラックコーヒーにはこれでもかってくらい大量の牛乳入れないと飲めないんだよね~」  颯斗さんの飲んでいるそれに牛乳を注ぎ、口を付けながら眉間に皺を寄らせる、そんなキャラメル男が脳裏に浮かんだ。 「あははっ!」 「あ、笑った。そっちの方がいいよ、佳英ちゃん」 「え?」  思わず笑った私に、颯斗さんは優しく目じりを下げた。 「佳英ちゃんは、笑ってた方がいい」 (颯斗さん、このためにわざと……?) 「はぁ~あ、妬けちゃうなあもう!」  颯人さんはそのまま美味しそうにブラックコーヒーに口を付ける。私はまだ口をつけていない自分のドリンクに目をやった。そこには、格子状にキャラメルソースがトッピングされていた。
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