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どうせ同じアパートだからと、颯斗さんと一緒に帰ってきた。
「今日は鍵持ってる~?」
アパートのエントランスで、彼はおどけてそう言った。
「ちゃんと持ってますよ、ほら」
私が鞄からキーケースを取り出すと、「ざんね~ん」と言いながら、彼は先に階段を上っていく。
「そういえば、」
「な~に?」
「最初にここで会ったとき、どうして颯斗さんの部屋じゃなくてアイツの部屋を薦めたんですか?」
「それ、もしかして俺のこと誘ってる?」
いたずらに顔を近づけてきた颯斗さんの胸を、私は思わず押し返した。
「あはは、冗談冗談!」
そう言って、彼は部屋の鍵を開ける。
「あのね、こーゆーことなのよ」
彼は私を手招きした。ドアの陰から彼の部屋の中をそっと覗く。
「にゃー」
可愛らしい茶色いモフモフが、主人の帰りを待っていたかのように玄関にちょこんと座っていた。
「か、可愛い……」
「これ、大家さんには内緒ね?」
颯斗さんは私の唇に、人差し指を押し当てた。
「っっっ!!!」
「じゃ、おやすみ~♪」
颯斗さんはそのまま扉の向こうに消えて行った。
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