4 ハチミツ入りハーブティー

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 ーー昨日、颯斗とジャマ子は一緒に帰ってきたらしい。  なぜかジャマ子はアイツの部屋の前で、  楽しそうに見つめあっちゃって、  ジャマ子の口元にアイツの手が伸びて、  それから先は見えなかったけれど、  妙な胸騒ぎがする。  颯斗、ジャマ子のどこがいいんだよ。  あんなおっちょこちょいで放っておけないような奴、  近くにいたら気が気じゃないわ…… 「へえ、気が気じゃないんだ?」  颯斗がコーヒーカップを手に、俺の顔を覗き込む。 「!」 「なーんかブツクサ言ってたから、聞こえちゃった~♪」 「……」  俺はふいっと顔を反らした。颯斗が淹れたせいで、部屋の中がコーヒーの匂いになった。 「お前、よくそんなもん飲めるな」 「俺からしたら雄嗣の方がよくそんなの飲めるな~って思うけど」  颯人は俺の手元を指差す。それは、俺の淹れた、特製ハチミツ入りハーブティーだ。  心を落ち着けようと、口をつける。いつもは落ち着くその香りが、逆に俺の心を掻き乱す。 「あ゛ーもうっ!」 「な~にそんなにイラついてるのさ?」  ケラケラ笑う颯斗は、俺の座るソファのへりに腰掛ける。 「……ッチ」  俺は颯斗の座る反対を向いて、舌打ちをした。気に食わない。颯斗も、俺のこの感情も、何もかも気に食わない。 「雄嗣、佳英ちゃんに会いたいんでしょ?」  颯斗の顔にニヤニヤが貼り付いているのが、その声色で分かった。俺は顔を背けたまま、乱暴に言い放った。 「んなわけねーだろ!」 「あ~あ~もう、2人そろって厄介ねぇ。会いたいなら隣の部屋の前に立ってピンポンを押す、それだけじゃない。すぐに会える距離なのに、なんでそうやっていつも……」 「うっせーな、黙って聞いてればさっきっからんなんだよ!」  思わず振り返って乱暴に言葉を投げかけると、待っていたかのように颯斗の顔が満足そうに皺を寄せた。そして首をかしげて、こんなことを言う。 「恋のキューピット、的な?」 「ああ゛?」 「佳英ちゃん、会いたいって言ってたよ?」 「……っ!」 「あ、黙った」 「ちっ……」 「おお、怖っ!」  颯斗がわざと肩をすくめたとき、玄関から呼び鈴が聞こえた。思わずドキリと肩をぴくつかせた。そんな俺を見て、颯斗は思わず噴き出した。 「噂をすればなんとやら、じゃない?」
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