1 さくら抹茶アイスラテ

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(はー、幸せ)  カフェを出て地下鉄に乗り込む。さくら抹茶アイスラテは、春の匂いを感じられてとても美味しかった。 (それにしても、今日は混んでるな……きゃっ!)  電車の急ブレーキで足元がふらつく。掴まるところも近くに無くて、とっさに前にあったものにしがみついた。 (ふう、何とか体制は保てた……嘘でしょ)  目の前にあったそれは、広い誰かの背広の裾だった。 (ああ、やっちゃった……) 「すみません、とっさに掴まっちゃって」 「大丈夫大丈夫、オネーサン怪我ない?」 「だ、大丈夫です、おかげさまで……」 (うそ、めっちゃイケメン……)  振り返った彼は、気遣いもできる最高の爽やかイケメン。 (私今日イケメンうん強いっ) 「オネーサン」  いきなりイケメンが耳元で囁いた。 (何これ、私明日死ぬの?) 「足元、気をつけてね」  そう言われて足元を見ると、彼のものではない、誰かの足をヒールで踏みつけていた。慌てて足を上げると、舌打ちが聞こえた。 「ひいい、ごめんなさいっ!」 「何だよ、またお前かよ……」  見上げると、さっきのキャラメルソースのイケメンが……。 「あれ、雄嗣(ゆうじ)知り合いだったの?」 「さっき俺の至福の時間を邪魔してきたジャマ子だ」 「何よ、ジャマ子って。私の名前は仲本(なかもと)佳英(かえ)よっ!」 「まあまあ、佳英ちゃん。ほらほら、雄嗣も謝んな」 「俺は謝らん。足を踏んできたのはそっちだ、ジャマ子」 「ああ、もう。佳英ちゃん、ごめんね、こんなやつで。俺は真下(ましも)颯斗(はやと)。こっちは伊達(だて)雄嗣」 「お前なに勝手に名乗ってんだよ」 「え、女の子から名乗ってくれたのにこっちは名乗らないの? おかしいでしょ?」  颯斗さんがそう言うと、キャラメル男はまたチッと舌打ちをした。 「あの、足を踏んでしまったのはこちらに非があります、本当にすみませんでした。では、私はここで降りますので」  私の声に一瞬、彼らの面食らったような顔が見えた。私はそそくさと、開いたドアから逃げるように降りた。
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