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(はー、幸せ)
カフェを出て地下鉄に乗り込む。さくら抹茶アイスラテは、春の匂いを感じられてとても美味しかった。
(それにしても、今日は混んでるな……きゃっ!)
電車の急ブレーキで足元がふらつく。掴まるところも近くに無くて、とっさに前にあったものにしがみついた。
(ふう、何とか体制は保てた……嘘でしょ)
目の前にあったそれは、広い誰かの背広の裾だった。
(ああ、やっちゃった……)
「すみません、とっさに掴まっちゃって」
「大丈夫大丈夫、オネーサン怪我ない?」
「だ、大丈夫です、おかげさまで……」
(うそ、めっちゃイケメン……)
振り返った彼は、気遣いもできる最高の爽やかイケメン。
(私今日イケメンうん強いっ)
「オネーサン」
いきなりイケメンが耳元で囁いた。
(何これ、私明日死ぬの?)
「足元、気をつけてね」
そう言われて足元を見ると、彼のものではない、誰かの足をヒールで踏みつけていた。慌てて足を上げると、舌打ちが聞こえた。
「ひいい、ごめんなさいっ!」
「何だよ、またお前かよ……」
見上げると、さっきのキャラメルソースのイケメンが……。
「あれ、雄嗣知り合いだったの?」
「さっき俺の至福の時間を邪魔してきたジャマ子だ」
「何よ、ジャマ子って。私の名前は仲本佳英よっ!」
「まあまあ、佳英ちゃん。ほらほら、雄嗣も謝んな」
「俺は謝らん。足を踏んできたのはそっちだ、ジャマ子」
「ああ、もう。佳英ちゃん、ごめんね、こんなやつで。俺は真下颯斗。こっちは伊達雄嗣」
「お前なに勝手に名乗ってんだよ」
「え、女の子から名乗ってくれたのにこっちは名乗らないの? おかしいでしょ?」
颯斗さんがそう言うと、キャラメル男はまたチッと舌打ちをした。
「あの、足を踏んでしまったのはこちらに非があります、本当にすみませんでした。では、私はここで降りますので」
私の声に一瞬、彼らの面食らったような顔が見えた。私はそそくさと、開いたドアから逃げるように降りた。
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