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6 エスプレッソ
「にゃー」
「そっかぁ、チャロは可愛いなぁ……」
膝の上で丸くなるチャロの顎を撫でると、彼女は嬉しそうに喉をゴロゴロと鳴らした。俺は自然にほころんだ頬から、溜息をもらしていた。
「はぁ……」
「にゃ」
突然チャロは立ち上がり、玄関へ向かう。
「どうしたのさ? チャロ……」
と、呼び鈴が鳴った。俺は慌ててチャロをリビングに連れ戻すと、玄関へ向かった。
「あら、佳英ちゃん、いらっしゃい。雄嗣のとこに居たんじゃなくて?」
胸の奥に広がったもやもやを隠して、俺は努めて笑顔を保った。
「なんだかいたたまれなくなってしまって、逃げてきてしまいました……」
「あはっ! 佳英ちゃんは素直だねぇ……」
目の前でモジモジする彼女は『恋する乙女』だ。なんとなく愛らしい。
「それで……要件は?」
変な気持ちが起こらないように、笑顔のまま端的に要件を問いただそうとしたのに。
「にゃー」
いつの間にかリビングから出てきたチャロが、彼女の足にすり寄っていた。
「君、また会ったね。かわいい……」
そう言いながらチャロの頭を撫でる佳英ちゃん。
「よかったら、上がってく? チャロと、遊んであげて」
「え、いいんですか!?」
キラキラと目を輝かせる彼女は、一体何なのか。俺は彼女をリビングまで招き入れ、チャロのおもちゃをいくつか取り出した。
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