7 アップルパイ

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7 アップルパイ

ーーピンポーン。 「誰? こんな朝早くから……」  私は寝ぼけた頭のまま、布団を頭からかぶった。おととい寝つけなかった分、今日は昼まで寝ていたい。せっかくの日曜日、誰にも邪魔させない……。 ーーピンポーン。 「仲本佳英はいませんよ~」  枕に向かってそう言って、再び目を閉じる。 ーーーピンポーン、ピンポーン。 「あーもう! 何なのムカつく! はいはい今出ますよ!」  重たい体を起こして、玄関へ向かう。ドアノブを回してそこに居た人物に、私は息を飲んだ。その男は、まだ朝の8時だというのに、爽やかな笑みを浮かべていた。 「おっはよ~佳英ちゃん♪」 「こんな朝から、何なんですか!?」 「佳英ちゃんとクッキングしようと思って♪」  颯斗さんはそう言うと、目の前に買い物袋を掲げた。 「りんご……?」 「そ。アップルパイ、つ~くろっ!」  目を白黒させる私を無視して、ずかずかと部屋の中に上り込んでくる颯斗さん。調理台にりんごやら何やら入っている袋をコトンと置くと、颯斗さんはそのままキッチンの収納を漁る。 「ちょちょちょ、人の家でなにしてるんですか!?」  しかし、彼の耳には私の言葉など入らないらしい。 「あーダメだ、道具が足りない」  そう言うと、颯斗さんはこちらを向き直る。 「いつも何食べてるわけ?」 「はい?」 「ま、いいか。ちょっと足りない道具取ってくるから、それまでに準備しておいて」 「何を……?」 「まあ、俺は佳英ちゃんが寝間着でも寝癖ついてても気にしないけどね!」 「~~~~!」  髪の毛を必死に撫でつけていると、颯斗さんは私の横をすり抜けて部屋から出て行った。
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