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颯斗さんはスパルタで、あれよあれよという間に生地がまとまった。それを冷蔵庫に入れて、一息つく。
「ふう」
「はい、お疲れ様……と、言いたいところだけど、これからりんごを煮るよ?」
「はい……」
「りんごの皮を剥く!」
「は、はい!」
しばらくすると、部屋に甘いりんごの匂いがたち込める。その匂いに反応して、私のお腹がぐ~と鳴った。
(そういえば、朝から何も食べてない……)
「まだ食べちゃだよ?」
まるで私の心を読んだかのように、颯斗さんはそう言って私を睨む。
「次は生地の続きだからね」
「は、はい……」
そんなこんなで、オーブンにアップルパイを押し込んだ。
「ふう」
「やっと一息だね~♪ お疲れ様」
颯斗さんは、私の頭をポンポンと撫でた。見上げた彼は笑っていた。なのに、なぜか切なそうに瞳を揺らしていた。
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