1 さくら抹茶アイスラテ

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「はあ、やっと家だぁ」  マンションのエントランスに着いた私は、がさごそと鞄の中を漁る。 (え、ちょ、鍵どこ?)  探せど探せど、鍵が見つからない。 (嘘でしょ、どっかで落としてきたかも……)  絶望にうちひしがれて、その場でペタンと座り込んだ。 「チッ」  舌打ちが聞こえて振り返ると、先ほどのキャラメル男が立っていた。 「あれー、佳英ちゃん」  後ろからひょっこり、颯斗さんが顔を出す。 「ジャマだどけ、ジャマ子。何で人んちのマンションの前で座り込んでんだよ」 「私は佳英よ、このキャラメル男っ!」  ムッとしたけどはっとした。もしかして、同じマンション……? 「何だとこのヤロー! ストーキングするならもっと他にやり方あんだろ。堂々と入り口に座り込んで待つとかバカか」  が、その言い方に私はやっぱりカッとなった。 「別にストーカーじゃないですからっ! 私の家ここなんです」 「へえ、佳英ちゃんもここなんだ。……もしかして、鍵無いの?」  優しい声の颯斗さんに、私はすがるような気持ちだった。 「そうなんです。エントランスから締め出し喰らっちゃって。……どうしよう?」 「泣かない泣かない。とりあえず、中には入れるから。俺の鍵で」 「ありがとうございます……」  颯斗さんの優しさで、とりあえずエントランスには入れた。  が。 「っ!! 家の中には入れないじゃないかっ!」 「ジャマ子、お前本当にバカだな」 「っていうかー、佳英ちゃんお隣さんだったんだねー」  人の事をバカとか言うサイテー男の隣でにこにこと爽やかな笑顔を輝かせる颯斗さんの言葉に、私は頷いた。 「そうみたいですね」  私の部屋は305号室。  颯斗さんは304号室、そしてキャラメル男は306号室だったのだ。 「んー、じゃあ雄嗣の家来る?」  颯斗さんに差し伸べられた手を取ると、なぜかキャラメル男の前に立たされた。 「え?」 「はぁ?」  悔しくもキャラメル男と声が被る。 「だってこんな哀れなレディ放っておけないじゃない。俺んちはちょっとレディをあげられる部屋じゃないからさ」 「チッ……」  キャラメル男はさっさと玄関の鍵を開けると、こちらを睨んできた。 「おい、ジャマ子。入らないならとっとと締めるぞ」 「は、はい、入りますっ!」 「じゃ、おやすみーお二人さん」  そんな颯斗さんの声を後ろ手に聞きながら、私はキャラメル男の家に足を踏み入れたのだった。
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