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で、来てしまった。焼きたてのおいしい香りを漂わせるそれを手に、キャラメル男の部屋の前に立っていた。
ーーピンポーン。
「ああもう、颯斗さん勝手に押さないでくださいよ!」
「いいじゃん♪」
ワーワーぎゃーぎゃー騒いでいると、目の前の扉が開く。
「ったく、人ん家の前でうっせぇな……」
「じゃ、佳英ちゃん頑張って!」
颯斗さんはそう言うと、私の背中をポンと押した。
「わっ!」
つんのめった私は、そのままキャラメル男の胸にダイブしていた。
(う、嘘~~~~~っ!?)
「ご、ごめんなさい!」
急いで彼の胸から離れると、手に持っていたはずのアップルパイがない。
ーーーべちゃっ!
「………あ」
「あーあ」
私と颯斗さんがそう言ったのは、ほぼ同時だった。
「ぷっ! 雄嗣、ナイスキャッチ!」
つんのめった拍子に宙を舞ったらしいアップルパイは、彼の頭の上に逆さ向きに着地したのだ。
「何のつもりだてめぇ……」
「ひぃ……ほ、ほ、本当にごめんなさいでした!!!」
意味も分からない謝罪の言葉を述べてしまうほど、私の頭は真っ白だった。
(なんで急にこんな漫画みたいな展開に……)
「おい、これ……」
キャラメル男は私の目の前で、頭についたりんごを指でつまむとそのまま口に放り込んだ。
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