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「……悪くねぇ。ってかこの味……」
「佳英ちゃんの手作りだよ♪」
思案するキャラメル男に颯斗さんがそんなことを言うから、私は思わず大きな声を出した。
「え、ちが! これは、颯斗さんが……」
「俺はレシピを教えただけ~♪」
そう言う颯斗さんは、私にウインクを向けた。
「ま、食べられなくなっちゃったけど……ぷっ!」
「てめぇ颯斗笑うな!」
「あの、お詫び! お詫び、しますから!!」
眉間に皺の寄りまくるキャラメル男に向かって、私はそう言っていた。
「何?」
キャラメル男の声が、頭上から降ってきた。
「お詫びって、何?」
キャラメル男がこちらを睨む。
(彼の好きそうな何か……)
その視線に怯みながらも、必死に頭を働かせる。
「えっと……じゃあ、スイーツブッフェ! スイーツブッフェに、行きましょう! ね! 3人で!」
「へぇ~いいねぇ♪」
颯斗さんの手が私の肩に置かれた。振り返ると、ニヤニヤを浮かべたその顔と目があった。
「でも、俺はパス。甘いの、不得手だからさ。2人で楽しんでおいで~♪」
颯斗さんはそう言うと、クスクス笑いながら自身の部屋へと帰っていった。
「…………よ」
「へ?」
ふと、小さな声が私の耳に届いた。
「……行けよ、俺と。スイーツブッフェ」
赤らんだ頬で、キャラメル男はそう言った。
「うん、行きましょう……」
「来週、な」
そう言う彼はふっと笑った気がして、私は小さくコクンと頷いた。
「じゃ。シャワー浴びないとな」
「はい、また……」
彼が背中を向けたから、私も甘い匂いがたちこめる玄関からそっと立ち去った。
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