7 アップルパイ

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「……悪くねぇ。ってかこの味……」 「佳英ちゃんの手作りだよ♪」  思案するキャラメル男に颯斗さんがそんなことを言うから、私は思わず大きな声を出した。 「え、ちが! これは、颯斗さんが……」 「俺はレシピを教えただけ~♪」  そう言う颯斗さんは、私にウインクを向けた。 「ま、食べられなくなっちゃったけど……ぷっ!」 「てめぇ颯斗笑うな!」 「あの、お詫び! お詫び、しますから!!」  眉間に皺の寄りまくるキャラメル男に向かって、私はそう言っていた。 「何?」  キャラメル男の声が、頭上から降ってきた。 「お詫びって、何?」  キャラメル男がこちらを睨む。 (彼の好きそうな何か……)  その視線に怯みながらも、必死に頭を働かせる。 「えっと……じゃあ、スイーツブッフェ! スイーツブッフェに、行きましょう! ね! 3人で!」 「へぇ~いいねぇ♪」  颯斗さんの手が私の肩に置かれた。振り返ると、ニヤニヤを浮かべたその顔と目があった。 「でも、俺はパス。甘いの、不得手だからさ。2人で楽しんでおいで~♪」  颯斗さんはそう言うと、クスクス笑いながら自身の部屋へと帰っていった。 「…………よ」 「へ?」  ふと、小さな声が私の耳に届いた。 「……行けよ、俺と。スイーツブッフェ」  赤らんだ頬で、キャラメル男はそう言った。 「うん、行きましょう……」 「来週、な」  そう言う彼はふっと笑った気がして、私は小さくコクンと頷いた。 「じゃ。シャワー浴びないとな」 「はい、また……」  彼が背中を向けたから、私も甘い匂いがたちこめる玄関からそっと立ち去った。
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