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綺麗にラッピングされたそれは、少し割れてしまっていた。なんとなく袋から取り出して、そのかけらを口に運んだ。
「ん、悪くない」
俺に気を使ったのか、少し苦みのある紅茶の香りのクッキー。
「でも、これは俺には甘すぎる」
彼女にとられるのは悔しいけれど、彼女を助けたいと思った事実がそこにある。
「矛盾してるよね~、なんでだろう……はぁ」
うまくいけばいいと思うのに、失敗してしまえと思っている。
幸せになってほしいのに、ぶち壊してしまいたいと思っている。
冷たいものが、頬を流れ落ちた。
「泣くもんか……」
下唇をぐっと噛んだ。血の味が広がった。
ふと、足元に感じる温かな温度。見ると、チャロが俺にすり寄っていた。
「君はずっと一緒だ」
チャロを抱きかかえて、頬ずりをする。チャロがゴロゴロと喉を鳴らすのは、きっとそれを了承してくれているからだと、俺は勝手にそう決めた。
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