9 ストロベリーミントキャンディ

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 彼はまた飴玉を口に放り込んだ。彼が飴玉をかみ砕く音だけが聞こえる。私はなんとなく気まずくて、口を開いた。 「それ、何味?」 「ストロベリーミント」 「美味しいの?」 「俺が食ってんだ、うまいに決まってんだろ」 「苺と薄荷は別々で食べた方が美味しいと思う」 「ああ゛? 別々にしたら、薄荷なんか食えるわけねぇだろ」 「ふふ」  その剣幕に思わず笑ってしまった。味覚はおこちゃまだ。 「笑うな! これ、本当にうまいんだぞ?」  外国語で書かれたパッケージを目の前に突き出されて、私は余計に肩を震わせた。 「はいはい、分かりました~」 「信じてねーだろ」 「信じます、信じます~」 「なぁ」 「ん?」  私が見上げると、彼はまた飴玉を口に放り込んでいた。 「お前も食えよ。うまいから」  そう言った彼の唇が、急に私のそれに触れる。その隙間から、コロンと私の中に、飴玉が転がってきた。 「!!!」 「うまいだろ?」  答える間もなく、雄嗣はまた私の唇を塞ぐ。  口の悪いキャラメル男と交わすキスは、どびきり甘くて少しスーっとして。  苺と薄荷の香りに包まれて、もっと味わっていたくて、私は小さくうなずくと、そっと目を閉じた。  おわり
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