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「はあ?」
「これ、甘過ぎっ! どんだけ砂糖入れたんですか、もう……」
「砂糖じゃない、ハチミツだ!」
「これ普通に飲める人の気が知れない……」
「悪かったな、テメーは飲まなくていいっ!」
キャラメル男は私の手からマグカップを奪い取ると、そのままぐっと飲み干してしまった。
「……」
「……」
ハーブティーを飲み終わってから、ずっと沈黙が続いている。と言っても、私はあの一口しか飲んでいないのだけれど。
「はぁ……」
「何いっちょまえに溜息ついてんだよ、ジャマ子。元はといえばお前が鍵なくすのがいけねえんだろ」
「そ、そうなんだけど……」
微妙に近いその距離で、キャラメル男の息が微妙に耳元にかかる。
(話さないでほしいんだけど……)
「お前、」
「ふぁ、はいっ!」
「まさかベッドで寝たいとか言わないよな?」
不機嫌そうな顔でも、近づいてきたらドキドキするわけで。
(ガンつけてんのか何なのか知らないけど、とにかく離れて―っ!)
その瞬間、彼の口元がニヤリと動いた。
「お前、こーゆーこと期待してたんだ」
彼の指が私の顎を持ち上げた。彼の顔がどんどん近づいてくる。
「そうかお前、わざと鍵無いって言って……」
整った顔が目の前にあって、どんな顔をしていいのか分からない。とにかく頬が熱を上げていることだけは分かった。
さらに近づいてくるその顔に、私は仰け反り目をギュッと瞑った。
(だ、ダメーっ!)
……チャリン
「……っ!」
キャラメル男は音のした方を手で探った。
「……ん?」
彼の掌には、私の家の鍵が乗せられていた。
「これ……」
「あー、朝急いで上着のポケットに入れっぱなしにしてたんだった!」
私は彼の手から鍵を奪い取ると、鞄を持って玄関に走った。
「お邪魔しましたっ!」
「……チッ」
彼の部屋を出て急いで自分の部屋に駆け込んだ。
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