1 さくら抹茶アイスラテ

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1 さくら抹茶アイスラテ

(明日こそ、いいことありますように)  そう思って寄った仕事帰りのカフェ。そこそこ人の多い店内で、私は一人用のソファ席を見つけた。 (よし、あそこにしよっ! とりあえず……あ、これでいいや)  たまたま首に巻いていたストールを席に置き、レジへと向かった。 (さくら味の新商品か。もうそんな季節なんだね、早いな) 「さくら抹茶アイスラテを」 「さくら抹茶アイスラテを……!!」  隣のレジの人と全く声が被った。 (まあ新商品だし、頼む人たくさんいるよね、そりゃ)  そう思って隣を見ると、“かっこいい男の人”だった。 「なにジロジロ見てんの? 男がこーゆーの頼んじゃ悪いわけ?」  見るからに不機嫌そうな彼は眉間に皺を寄せて、一度チッと舌打ちをすると、財布からカードを取り出した。 (えーこのカフェのカード持ってるの? 意外……) 「だから、俺がこーゆー店きたら悪いわけ?」 (はっ!! エスパー……?) 「658円です」 「は、はい」  私は急いでお金を払うと、受け取りカウンターへ進んだ。 「お前、ついてくんな」 「ちょ、失礼じゃないですか? 買ったら誰でもこっち進むでしょ、普通」 「何だよ、もう……ふざけんな」  キレる相手を失った彼は、チッと舌打ちをした。 (なんなのよ、もうっ!! はあ、こういうのは相手にしない、相手にしない……) 「さくら抹茶アイスラテでお待ちのお客様」 「はい」 「はい」 「ああ゛? これは俺んだ」 「私も同じの頼んだんですけど」 「上のキャラメルソースが俺の証拠だ」 「え? ……ぷっ!」  思わず笑ってしまった。レジで注文した時、彼はキャラメスソースのトッピングなんて一言も言っていなかったから。 (常連さんなのかな?)  私がそう思うのと同時に、彼はまたチッと舌打ちをして行ってしまった。 「さくら抹茶アイスラテでお待ちのお客様」 「あ、はい」  私はさくら抹茶アイスラテを受け取ると、さっきのソファ席へと戻るのだった。
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