恋は順調

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タマもエドワードも本当に必要なこと以外はしゃべらないようエコモードに切り替わる。 昔はノーミートマンデーというのがあったが、今はもうない。 その必要がないからだ。 毎日人工肉以外の本物の肉を食べる人は誰もいないからだ。 「体験レッスンはどうだった?」 「うん、よかった」 「入会するの?」 「もうしてきたよ」 「そうなんだ、いつ通うの?」 「毎週水曜日」 「ふうん」 ロウソクに照らされる颯一郎さんの顔が何か言いたげだ。 「なぁに?」 「いや、いい事だよ、そうやって百合子が何か新しいことをするのは。家にばかりいないでもっと外に出たほうがいいよ、そっちの方が百合子のその妄……」 颯一郎さんはカレーを食べる手を止める。 「私の‘もう’なに?」 「なんでもないよ」 そして思い出したように水を飲む。 「それより白い恋人食べようか、僕が紅茶入れるよ」と颯一郎さんは立ち上がった。 水曜日は朝から浮かれすぎていっぱい失敗をしてしまった。 タマのヘルプがあってもそうだったのだからよっぽどだ。 流君とのレッスンのことで頭がいっぱいだったのだ。 驚くほどまずいグリーンスムージーを作ったり、いつまでもコーヒーができないと思ったらコーヒーメーカーのスイッチを入れるのを忘れていたり。 颯一郎さんは嫌な顔一つせず、2人分のまずいグリーンスムージーを飲んで――私は不味すぎて自分の分が飲めなかった――仕事に出かけた。 颯一郎さんの見送りも早々に家に入ると出かける準備を始めた。 『レッスンに行くだけなのにずいぶんお洒落するんですね』 時々エドワードは余計なことを言う。 そんなエドワードを無視し私はいそいそと家を出た。 『いってらっしゃい、イヴ』 1週間ぶりに見る流君は変わらず王子様そのものだった。 間違いない。 流君は私がずっと待っていた私の王子様だ。 「それでは百合子さん、今日もよろしくお願いします」 流君はレッスン室のドアを閉め笑顔で私を見つめる。
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