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「……もう、長くないそうだ」
「そんな……」
「店も閉めるしかないな、俺一人じゃしんどいから」
頭を押え、必死に涙をこらえるおじさん。
きっと、大切な人を失いそうになってる悲しみと、お店のことなど現実的なことといろいろ頭の中でちぐはぐになっているんだろう。
「……陸に連絡してくる」
そういいおじさんは俺たちの前から去った。
ついて行こうとしたが親父に止められた。陸に連絡しなければいけないというのもあるが1人になりたいというのもあるんだろうとのことだ。親父とおじさんも幼なじみだからわかるんだろう。
しばらくするとおじさんが戻ってきて親父と話し始めた。
「陸が、こっちにくるって」
「そうか」
「学校をやめて、店を継ぐって……いいって言ったんだがあいつきかないんだ」
「陸くんはたまに頑固なところがあるからな」
そんな会話を聞いて少し懐かしい気持ちになった。
小学生のときとか、喧嘩したら陸からは絶対謝らなかったな。
それからしばらくして、俺は明日も依頼主との約束があるから先に自宅に帰った。
その日は、ショックからかうまく寝付けなかった。
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