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「湖さん、ぼく、湖さんと会えてよかったよ」
「なにを改まって」
季節は秋から冬に移り変わっていた。少年の腕にはいくつもの管が刺さったままだ。
「ぼく、たぶん良くならない」
「……」
「パパもママもごまかしてるけど、わかるんだ。小学生でもさ」
「私は病気のことはわからん。それに君も私も、パパもママも、遅かれ早かれ、いずれ死ぬのだ」
少年は、苦渋の口元から出た言葉に、ひどく大人びた微笑で答えた。
「湖さん、そんなこと言って、本当に導師みたい。……ねえ、これで人にも会える?」
「もちろんだとも」
湖老師は自信ありげに頷いた。
「ぼく、しれなちゃんに会いたい」
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