スイートピーが咲く頃に

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 時が経ち、リズは15歳になった。毎日早起きして、種に水をやりながら様子を見たが、芽が出る様子もない。  リズの母が貯めていた金は底をつき、リズは服を縫う仕事をしながら生活していた。  リズがいつものように職場に向かっていると、「おーい!」という声が聞こえた。振り返ってみるとそこには1人の青年が立っていた。  「何か用ですか?」と問うと、「君が持ってるのって、スイートピーの種だよね!?」 「もし良かったら僕にくれない?」と詰め寄ってきた。  リズは怖くなり無視して職場へ行こうとしたが、スイートピーの種と言っていたのを思い出した。この人なら花の咲かせ方が分かるかもしれない! 「見せるだけね。」と言い、青年を案内した。  青年は種をまじまじと見た。 「やっぱり、図鑑と同じだよ。1000年前この地域には大きな国があって、その国の国花がスイートピーだったんだ。」 「この種は母の形見なの、名前があるなんて知らなかった。あなたは、この花の咲かせ方って知ってる?」 「それを僕が知ってたら苦労しないよ。僕たちは先祖が飲んだ薬の作用で生まれてから約25年間は汚染された世界でも生きられるけど、植物は繊細だからね。綺麗な場所でしか生きられないんだ。」 「すごく植物について詳しいのね。」 「僕は植物の学者だからね。どうしたら空気や土壌が綺麗になるかっていう研究もしてるんだ。」  しばらく彼と話した後、彼とはとても気が合うことにリズは気付いた。そして彼も同じ気持ちだった。  それからリズと彼は、仕事終わりに毎日広場のベンチで世間話やたわいもない話をしたり、植物図鑑を眺めたりした。  毎日会うにつれ、彼のリズを想う気持ちは日に日に大きくなり、リズが18歳の時にプロポーズ、そして結婚した。2人は幸せだった。  けれども結婚して2年が経った頃、リズの様子がおかしくなる。止まらない咳に加えて、血が混じった痰を出すようになったのだ。  医者の診療を受けると、母と同じ肺がんであった。    リズの症状は日に日に重くなり、ついには立つことさえ出来なくなった。    
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