悠樹side #2

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こいつ、わざわざ化粧してきたのか? 今の小一時間のあいだに? そう言えば服装も先ほどと変わっている。 もしかしてこれからどこかに出掛けるのだろうか? プライベートなことを聞く権利なんてないが、朝から一緒にいたせいか少し気になってしまう。 俺が急に無言になってしまったのを不思議に思ったのか、白石が「部長?」と窺うように視線を向けてきた。 「ああ、悪い。いや、どっちが俺のうどんかなと思って。それよりお前、今の時間でわざわざ化粧してきたのか?」 俺の言葉に白石が気まずそうな表情を浮かべる。 「あっ、はい……。さっきお家に帰って鏡を見たら、お化粧が取れ取れだったので……。あんなすっぴんにほぼ近い顔で部長とお話してたとは思わなくて……。それにお風呂にも入ってなかったし。シャワーを浴びたついでにお化粧しました」 白石の口ぶりから、出掛ける様子がないことに少しほっとした俺がいた。 「そうか。でも化粧してもそんな変わらないよな」 「ちょっ、ちょっとそれはどういう意味ですか? どうせ私は化粧してもしなくても変わり映えの無い顔です!」 言い方が悪かったのか、白石は頬を膨らませて俺をジロリと睨んだ。そう言う意味で言ったのではないと、慌てて否定する。 「違う、そういう意味で言ったんじゃないんだ。化粧しなくても十分可愛いってことだよ。さっき可愛い顔して寝てたぞ。寝顔が可愛いって最高じゃないか」 ただ素直な気持ちを言っただけなのに、またしてもこの答えがどこか気に障ったようだ。
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