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「羨ましがる人? そっか、部長と2人で打ち合わせって知られたら、いくら仕事でも他の女子社員たちがいいなって思っちゃうよね」
そんなことに全く気づいていなかった私は、両手で口元を押さえた。それに打ち合わせもそうだけど、先週一緒に食事をしたことや、週末に部長の部屋に入ったなんて知られたらそれどころではない。
「茉里さん、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。特に羨ましがるのは葉子さんくらいですから。それよりもあとは……、心配する人かな」
またもや楽しそうに若菜ちゃんがニヤついている。
「そうだね、葉子に知られたらきっと色々聞いてくるから、若菜ちゃん、ランチの時はその話は言っちゃダメだからね」
「はーい、わかりました」
「それより、心配する人って誰? 部長と2人で打ち合わせしても心配する人なんていないでしょ。だって上司だよ」
「そうなんですけどね。でも好きな人が異性と2人で打ち合わせって聞くととっても心配なんです。たとえ上司と部下でも……」
「もっ、もしかして、このフロアの中に松永部長のことを本気で好きな人がいるの?」
声をひそめるようにして若菜ちゃんだけに聞こえるように囁く。だいたい私は吉村くんの好きな人がこの会社の中にいるってことも気づかなかったくらいだ。
部長のことを本気で好きな人がいるなんて……。
そんな人がいたなんて全然知らなかった。
その人を知らないうちに心配させるようなことはしたくない。
「茉里さん、私、茉里さんのそんな天然なところが大好きです。お昼からの打ち合わせ、頑張ってくださいね。葉子さんには秘密にしておきますから」
若菜ちゃんは再び楽しそうな笑顔を私に向けると、結局その人は誰とは教えてくれないまま、また自分の仕事をし始めた。
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