こんなのキスじゃない

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「でもな白石、ここからがポイントだ。まずそうやって男を探すのにどれだけ時間がかかると思うか?」 「時間、ですか……?」 どれだけって言われてもそんなの分からない。 小さく首を振りながら部長の顔を見る。 「それが今までの白石だよ」 「今までの私?」 「ああ、かなり時間がかかるってことだ。このマニュアル本通りに行動をしても途中で彼氏と上手くいかなくなってたんだろ? それは当たり前だ。最初はお互いに好意を抱いても、それはきっかけであってその後は手探り状態だ。付き合いを重ねていくうちにもっと相手を好きになったり、その反対もある。知らなかった一面を見て自分とは合わないって思うことだってあるだろう?」 まるで学校の先生のように分かりやすく説明してくれる部長は再び優しく微笑むと、それにな──と言葉を続けた。 「さっきの例えに戻るけど、もし最後に残った男が専務のようなおっさんだったらどうする? お前、好きになるか? ならないだろ。そこには白石の好みは反映されないんだ。残った男の中で白石も好きになれる男がいたら、そしたら上手くいくだろうけどな」 専務のようなおっさんって……。 部長まで葉子や若菜ちゃんと同じこと言ってる。 つい笑いそうになり口元に力を入れる。 「こういう本を参考にして恋愛を上手くいかせようとするのは時間がかかって仕方ないぞ。彼氏なんかいつまでたっても出来やしない。これは誰とでも恋愛が上手くいくための本ではなくて、白石のことを本当に好きな男を見つけ出して、そいつと上手く恋愛をしていくための本だからな」 部長が順を追って説明してくれたことで理解はできたけど、そしたら私はどうしたらいいの? 今まで私がしてきたことは全て間違ってたってわけ? そんなのうそでしょ……。
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