こんなのキスじゃない

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「男はな、興味のある女だったらこんなことしなくても気になって仕方ないし、追いかけたくなるし、女から連絡がくるまでとことん待つけど、あまり興味のない女だったら全く気にもならないよ。連絡がすぐに来ない時点で終わりだ。要するに相手次第ってことだ。失敗を恐れてこんな本を参考にするより、たくさん恋愛した方が上手くいく確率は高いと思うぞ。だがこういう本が売れてるってことは、実際にこれを参考にして、この通りに動く女性がたくさんいるんだろうな。……あっ、ここにいたのか」 わざとなのか、それとも本気でそう思っているのか分からないけれど、我慢できなくなったのか部長はクスクスと笑い始める。 「部長みたいにモテる人には分からないですよ。私はほんとに真剣というか切実な悩みなんですから!」 不貞腐れたように少し頬を膨らますと、わかったからそんな顔すんなよ──とまたクスクスと笑う。 「でもさ、実際にキスするのに何回目のデートでするとか考えるか? その場の雰囲気だろ? お互い好きなら、したいと思ったタイミングでするもんじゃないのか?」 「そっ、それはそうかもしれませんけど……」 「白石、お前ほんとに経験ないのか? キスも?」 「わっ、私だって、きっ、キスくらいはありますよ」 真っ赤になりながらも反論する私に、悪い悪いと微笑む。そして部長は、手に持っていた本をテーブルの上に置いた。
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