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「茉里さん、今回の部長、営業部の水島部長に匹敵するくらいのイケメンですね」
私は若菜ちゃんに向けて口元で笑顔を作って応えると、また前に向き直した。
確かに若菜ちゃんの言うとおり、営業部の水島部長が奥二重の涼しい目をした柔らかい雰囲気のイケメンなら、今回の部長はくっきり二重の誰が見ても正統派な男らしさが際立つようなイケメンだ。
高身長に細身だけど肩幅はあり、彫りの深い整った目鼻立ちにシャープなフェイスライン。ただ濃いという顔ではなく、色気と上品な雰囲気が漂っている顔立ちだ。
松永部長の醸し出す雰囲気に自然と背筋に力が入った。
なんだか完璧で近寄りがたい人だな──。
赴任してきた時の私の松永部長への印象は、イケメンというよりも完璧で近寄りがたい人という感じだった。
一緒に仕事をするようになっても松永部長の印象は『完璧で近寄りがたい人』のまましばらく変わらなかった。
若くして32歳で部長、イケメン、そして色気と上品さを纏ったこの雰囲気。最初は部長の前に立つだけでいつも以上に緊張してほどだ。
だけど見た目の雰囲気とは違い、仕事は丁寧で早く、朝早くから夜遅くまで仕事をしている姿を見たり、かといってそれを部下に強要することもなく、仕事でわからないことがあると的確なアドバイスをくれたり、きちんと相談にのってくれることに、近寄りがたかった印象が少しずつ溶けていった。
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