こんなのキスじゃない

20/21
前へ
/454ページ
次へ
絡まっていた舌がやっと解かれ、部長の唇が一瞬離れる。だけどすぐに啄むようなキスを始めると、頬に添えられていた手が滑り落ちるように首筋へと移動した。 顔が唇から離れ、首筋で指先を上下に滑らせながら、色香を含んだ瞳でじっと見つめられる。私は浅い呼吸を繰り返しながら見つめ返すことしかできなかった。 すると部長は首筋に顔を近づけ、優しく唇を這わせてきた。 部長の口から零れる吐息と首筋から伝わる唇の感触で、私の身体が意思に反してビクッビクッと反応する。同時に「んあっ……ん」と自分でも驚くような女っぽい声が漏れた。 いやっ、こんな声恥ずかしすぎる……。 かっ、身体に力が入らなくなっちゃう──。 そう感じた数秒後、急に部長の動きがぴたりと止まった。同時に身体から一気に力が抜け、私は部長に抱きつくように倒れ込んだ。 部長は倒れ込んだ私を一瞬強く抱きしめたあと、すぐにパッと手を解き、ゆっくりと身体を離しながら私の顔を見た。 「ごっ、ごめん……。悪い……やりすぎた」 部長が謝っているということはわかっているけど、頭の中がぼうっとしていて何も考えることができない。 自分の心臓の音だけがドクドクドクドクと聞こえてくる。 「大丈夫、……か?」 心配するように、様子を窺うように、部長が眉をひそめる。私はぼんやりとした中で部長の顔を見つめた。
/454ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35098人が本棚に入れています
本棚に追加