一緒に福岡へ

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部長から鯛茶漬けと聞いて、私は焼いた鯛の身をほぐしたお茶漬けだと思っていたのだけれど──。 「これが鯛茶漬けですか?」 出てきたのは、ゴマだれがたっぷりとかかったお刺身と白いごはん、そして海苔や山葵、葱などの薬味と、小鉢が2つだった。 「白石さんは鯛茶は初めてなのね。美味しいからぜひ食べてみて」 如月さんがにこにこと微笑みながら、どうぞ、と手のひらを向けてくれる。 「白石、まずはな、この刺身をごはんの上にのせて漬け丼として食べるんだ」 部長が鯛のお刺身を箸で掴んでごはんの上に乗せ、その上に山葵を少しつける。一度箸を置いて「いただきます」と手を合わせると、再び箸を持ち、ごはんと一緒にお刺身を口に運んだ。 「うわっ、旨っ。あー、この味! 久しぶりに食べるとやっぱり旨いわ」 部長の言葉に、如月さんがさらににこにこと微笑んで部長の食べっぷりを見つめている。まるで温かく見守るお母さんのようだ。 「さあさあ、白石さんもどうぞ。松永くん、足りなかったらお代わりもあるから。若いんだからたくさん食べなさい」 私も「いただきます」と手を合わせると、部長がしたようにお刺身をごはんの上に乗せ、その上に山葵を少し置き、ごはんと一緒にお刺身を口に運んだ。 「うわぁ、ほんとだ。すっごく美味しい」 口元に手を添えて思わず目を見開く。 ぷりぷりの新鮮な鯛と甘じょっぱいゴマだれが見事にマッチしていて自然と顔が綻んでしまう。 ゴマだれとお刺身がこんなに合うなんて……。 「どう? 美味しいでしょ。白石さんも足りなかったらお代わりがあるからね。あなたたち若いんだから、しっかり食べないと」 如月さんは嬉しそうに微笑むと、自分も箸を持ち、鯛茶漬けを食べ始めた。
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