偵察ではなくてデート?

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「いらっしゃいませ。2名様ですか?」 はい、と頷くと、「今、1階席、2階席ともいっぱいで、カップルシートしか空いていないのですが、よろしいでしょうか?」と店員さんが申し訳なさそうに聞いてきた。 部長と顔を見合わせて2人で微妙な笑みを浮かべながら、大丈夫ですと答える。 「では、ご案内しますのでこちらへどうぞ」 店員さんは明るい笑顔を向けると、私たちを席まで案内してくれた。 かっ、カップルシートってソファー席? 部長ともう一度顔を見合わせて、目を丸くする。 店員さんが案内してくれた席は、窓側にある2人掛けの横並びのソファー席だった。 周りを見渡すと、4人掛けのテーブル席や、2人掛けの向かい合って座るテーブル席もたくさん設けられているけれど、全部お客さんで埋まっている。 そしてカップルシートと呼ばれる横並びのソファー席は、縦にずらりと並び、前後のお客さんとはプライベートが保たれるように、背もたれが少しだけ高めに設定してあった。 先に私が奥に座り、通路側に部長が座る。 座り心地のいいふわふわのソファーだけれど、2人掛けのソファーのため、部長とかなり密着して座る感じになってしまった。避けようとしても、部長の腿と私の腿がどうしても当たってしまう。 「すみません部長、狭いですよね」 「俺は大丈夫だが、白石の方が狭いんじゃないか? それにしてもここはすごい賑わってるな」 確かにずらりと並ぶカップルシートにも、カップルや女子同士が座って楽しそうにお話をしている。 「ほんと、すごく賑わってますね。ところで部長、何にされますか? 」 「俺はコーヒーでいいよ」 「じゃあ私は……カフェオレにしようかな。うわっ、このパンケーキ美味しそう! こっちのアップルパイにはアイスが2個も乗ってる!」 「白石、もしかしてまだ食べるのか?」 メニューを見て声をあげている私に、部長が驚いた顔を向ける。 「ほんとはお腹いっぱいなんですけど、でも結構パンケーキ食べてる人多いじゃないですか? それにこのアップルパイ、アイスが2個ついてるんですよ。美味しそうじゃないですか。あの部長……、これもはんぶんこしませんか?」 「お前昨日、明日からダイエットするって言ってなかったか?」 「あっ! そうだった……」 昨日ラーメンを食べる時、ダイエットは明日からって宣言したことを思い出し、思わず口に手を当てる。 食べたら太っちゃうかな。 でも、みんな食べてるから美味しそうだし……。 パンケーキだけやっぱり食べようかな。 どうしようかと真剣に悩んでいると、部長が目元を押さえて笑い出した。
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