偵察ではなくてデート?

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「そんなに真剣に考えることかよ。じゃあ、2つ頼んではんぶんこするか?」 「ほんとですか!」 両方食べれるなんて嬉しくて顔がニヤケてくる。 「ほんとにお前は……。飲み物はカフェオレでいいのか?」 「はい、カフェオレにします」 すみません──と部長は店員さんを呼ぶと、パンケーキとアップルパイ、そしてカフェオレとコーヒーを注文した。 注文を終えた部長が今にも吹き出しそうな顔をして、私の顔を見る。 「ダイエットなんか気にせずたくさん食べろよ。ここでもしっかり偵察するんだろ?」 「し、しますよ……。ここはメニューもそうですけど、外観が参考になりそうですよね」 「そうだな。同じような住宅街に店舗を構えているし、外観も戸建てのようだし、確かに参考にはなりそうだが、でもウチはチェーン店だからな。こういう独立したカフェと似たようにするのは少々難しいよな」 「そっか……。あのギャラリーをどういう風にウチらしいカフェに変えていくかをまずは考えないといけないってことか……。ウチのカラーは消しちゃダメってことですもんね」 「そうなんだけどな。実は俺もその辺りを考えていたんだ。あのギャラリーを生かすにはチェーン店にするのはもったいないと思うんだ。少し安っぽく見られてしまうだろ? でもな、ラルジュとして開店させないといけないからな……」 部長も腕を組みながら真剣に考えている。 密着して座っているせいか組んでいる腕が私の腕に当たり、私も何かいい案がないか考えようとするのに、その腕の温もりからどうしても意識が右腕にいってしまう。 なあ白石──と顔を向けられたところで、身体がビクンと反応した。 「は、はい」 「戻ったら企画を練り直すだろ? 来週の水曜日中にはできるか? 夕方まででいい」 「わかりました。水曜日中に仕上げます」 「じゃあ水曜日中に仕上げてもらって木曜日の午前中にそれを元にもう一度打ち合わせしよう」 アイデアが出るか分からないけれど、如月さんのギャラリーで撮った写真と昨日ホテルで纏めたメモと、そして今日見た2軒のカフェを参考にしていろいろ考えてみよう。 私は鞄から再びノートを取り出して腿の上に置くと、部長に当たらないように気をつけながら、このカフェの外観や内装の様子をメモし始めた。
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