すべてが始まる夜に【コミカライズ原作】

上司が振られていました

10月の爽やかな青空が広がる土曜日。
日中の陽射しはまだ暑いけれど夕方になると夏までの気温とは異なり秋の訪れを感じてくる。
銀座で買い物を終えた私は、歩いて日本橋まで移動したあと、新しく出来たというお洒落なカフェに入り大好きなカフェオレを注文した。

あー、結構疲れたな。

今日はお母さんの誕生日プレゼントを探すために銀座まで買い物に来ていた。こんなことでもない限り普段の生活の中ではあまり足を運ぶことのない銀座のデパート。そのせいか店内にあるもの全てが高級に思えてきて、なんだか場違いな場所に来てしまったと妙な緊張感に包まれてしまう。

予算と相談しながらお母さんが喜びそうなプレゼントがないかとデパートの中を何度も見てまわり、少し気後れしながらも悩んだ結果、お母さんに似合いそうなラベンダー色のカシミアのストールを購入した。そして地下におりて、日本ではここ銀座のデパートでしか売っていないというチョコレートも購入して、２つを一緒に長野の実家に送ってもらうように手配してきたところだった。

腕時計を見るともう夕方の16時前だ。
確か銀座に着いたのが13時頃だったから、３時間近くも休憩もせず歩き回っていたら疲れるはずだ。

朝ごはん食べたの10時過ぎだったもんね。
少し早いけど夜ごはん食べて帰っちゃおうかな。

先にカフェオレを注文してしまったけれど、何か食べようかと左右に首を動かしてコキコキと鳴らしながら、メニューを開く。

えっと、デミグラスソースのふわとろオムライスにタイ風ガパオライスと……。
海老とアスパラのクリームパスタも美味しそうだな。
うわっ、たっぷり野菜のあんかけハンバーグもある。
全部美味しそうで迷うな、どうしよう……。
カフェオレ頼んじゃったし、スイーツの方がいいかな。
別に夜ごはんがスイーツでもいいよね。
スイーツだと……、パンケーキ？　あっ、フレンチトーストもいいな。

お腹が空いているせいか、目に入ってくるメニューは全て惹かれるものばかりだ。何にしようかと迷っていると、突然斜め後ろの方から女性の少し怒った声が聞こえてきた。