偵察ではなくてデート?

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カフェで2つもスイーツを食べてお腹がいっぱいだったせいか、帰りの機内でも行きと同様にいつの間にか眠ってしまい、目が覚めたのは飛行機が羽田空港に着陸した時だった。 身体に大きな衝撃を感じて目を開けると、こともあろうか部長の肩に寄りかかって寝ているという失態をおかしてしまっていて、慌てて姿勢を元に戻した。 「部長、すみません。すごく重かったですよね? ほんとにすみません」 「気にしなくていいって。慣れない出張で疲れたんだろ。移動だけでも疲れるっていうからな」 「いや、でも……。私のせいで部長が寝れなかったんじゃないですか?」 「俺は飛行機や新幹線の中では寝ようとしてもあまり寝れないんだ。だから白石が行きも帰りもこうして熟睡できるなんてある意味羨ましいよ」 ほんとに気持ちよさそうによく寝てたからな──と意地悪っぽい笑顔を浮かべて楽しそうに笑う。 こっちはしっかり寝顔まで見られて、恥ずかしくて仕方ないっていうのに。 その笑顔に向けて、はぁーと大きな溜息を吐いていると、「なんでそんな顔するんだ?」と不思議そうに聞いてきた。 「だって部長の前では恥ずかしいことばかりしてるから……」 「恥ずかしいこと?」 「そうです。あのはつ……」 あの発言とかキスとか……と言いかけそうになって、慌てて口を閉じる。 「なんだ?」 「もういいです。降りる準備しなきゃ。早くシートベルトのサイン消えないかな」 部長の視線を感じながらも気づかないふりをしてそわそわしながら待っていると、天井にあるシートベルトのランプが消えた。その瞬間、一斉に乗客が立ち上がる。 私も立ち上がると、部長が収納棚からスーツケースを出してくれた。 「白石、羽田でメシでも食って帰るか? どうする?」 「私、パンケーキとアップルパイでまだお腹がいっぱいなんです。部長は何か食べられますか? 飲み物だけでよければ付き合いますけど。すみません」 「いや、実は俺もそんなにお腹は空いてなくてな。今日はあんまり動いてないだろ? じゃあこのまま家まで帰るか」 たくさんの人がスーツケースを引きながら行き交っている空港内を通り抜けてタクシー乗り場まで向かい、部長と一緒にそのままマンションへと帰る。 マンションへ到着するともう辺りは真っ暗になり、時刻は19時を過ぎていた。
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