偵察ではなくてデート?

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「うちの一番人気と言えば野菜たっぷりのローストビーフサンドと、ふわふわのフレンチトーストです。でもあのカフェのメニューに比べたらインパクトが弱い気がして……。あの、味じゃないんです。味は自信があります。見た目です。見た目が弱い気がするんです」 「なるほどな。見た目か……。確かにあの2つに比べたら劣るよな」 「部長もやっぱりそう思いますよね。どうにかもっと美味しそうに見えないかと……。せっかくあのギャラリーをラルジュとして生まれ変わらせて提供するので、外観や内装だけでなく、フードもお洒落に提供できたらいいなと」 うちはチェーン店なのでフード自体を新たに作るということは難しい。まず企画をあげて会議をし、その後決定事項となってからの作業となるので、かなり時間がかかってしまう。たとえすぐに企画が通ったとしても3月のオープンには全然間に合わない。 「なんかいいアイデアはないかな? 戦略部で会議をしてみんなの意見でも聞いてみるか?」 「そうですね。そうしていただけると有り難いです。私も土曜日に会社の近くの喫茶店に行って何かヒントがないか考えてみます」 「会社の近くの喫茶店?」 「はい。前に部長に話したことありましたよね? プリンが絶品だって言ったあの蔵田珈琲です」 プリン? と部長の目が輝いたように大きくなった。 その表情を見て、プッと吹き出してしまう。
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