マニュアル本女 vs イケメン上司

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「最初から怖がっていたら何もできないぞ。普通に付き合っていても価値観の違いや性格が合わないとかで別れるときは別れるんだ。例えば白石がそのマニュアル本通りに付き合ったとする。ちゃんと順番を守って結婚したのに、そのあと結婚相手が浮気したらどうする? そういうことだってあり得るんだ。マニュアル本通りにしたからといって幸せかどうかはわからないぞ」 俺なんか見てみろ、人前で女にあんなこと言われたりするんだぞ。男と女なんて何が起こるかわからないんだ──と、私を励ますようにわざと笑顔を浮かべる松永部長。 確かにそうだよね。 付き合って結婚するのがゴールではない。 そこからまた新しいスタートになる。 マニュアル通りに付き合って結婚できたとしても、そのあと相手に捨てられないっていう保証はないもんね。 そんなこと考えたことなかった。 「せっかく可愛い顔してるんだから、そんなに真面目にならなくてももう少し気軽に付き合ってみるのもいいんじゃないのか」 部長はそう言って運ばれてきたビールをぐいっと飲んだ。続いて合鴨の山椒焼きに箸を伸ばし、口に入れる。 「おっ、これも旨い。山椒がきいていい酒のつまみになる。白石、食べてみろ。旨いぞ」 勧められるまま、私も合鴨を箸で掴み口に運ぶ。 部長が言った通り、ピリッとした山椒がきいていてジューシーで美味しい。 私は合鴨を味わって飲み込んだあと、再び口を開いた。
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