魔性のプリン

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「いいか、まずカップの周りのプリンの表面を軽く押しながら空気を入れるように少し剥がすんだ」 部長が器用にスプーン背を使ってカップの周りのプリンを優しく押していく。 「でな、皿の上にプリンを逆さにして乗せる。しっかりと皿とプリンを固定して、ここで2、3回振る」 説明したようにプリンとお皿をしっかりと持って、部長が2、3回横に軽く振る。 「縦に振ったり、強めに振ったらプリンが崩れる場合があるからな。力加減が大事だ。それで皿をテーブルの上に置いて、カップを揺らしながらゆっくりと外すと………、ほら、綺麗に出ただろ?」 そこにはプラスチック容器から綺麗に出た山型のプリンがぷるぷると揺れていた。 「うわぁー、すごい! ほんとに、ほんとに綺麗に出た! 嘘みたい……」 思わず口元に両手を当て、目を丸くする。 コンビニのカップのプリンが一瞬にしてお皿の上に出てきた。まるで魔法のようだ。 「白石、お前もできるからやってみろ。ほらっ」 お皿とスプーンを私の目の前に置き、蓋を外した2個目のプリンを横から手渡してくれる。 「えっと、まずプリンの表面をスプーンで軽く押さえるんでしたよね?」 「そう。カップの周りのプリンを少しだけ剥がすように優しくな」 さっき部長がしたように、私もプリンの表面を優しく押さえながら少し剥がしていく。 「それでお皿の上にこのプリンを逆さにして置いて……、しっかりと手で持って、2、3回振る」 私が横に振った強さを見て、「その振り方はちょっと弱いんじゃないか?」と部長が呟いた。 部長の言った通り、お皿をテーブルの上に置いて、カップを揺らしてみてもプリンはなかなか出てこない。 「あれ? 出てこない……」 プリンの表面を見ると、プリンはカップにくっついたままだ。 もう一度お皿とプリンを固定して2、3回振り、カップを揺らしながら外すと、今度は少し崩れたプリンが出てきた。 「えー、どうして? 私のプリン崩れてる……」 理由を尋ねるように部長の顔を見ると、原因は2つだな──と人差し指と中指を立ててピースサインを作った。
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