魔性のプリン

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「まず最初の振り方が弱すぎたこと。そして2回目に振った時は本来ならちょうどいい強さだったと思うが、1回目の振りでプリンを少し動かしたところに強く振っただろ? だからじゃないか。最初から2回目に振った強さでもう一回やってみろ。そしたら上手く出せると思うぞ」 部長は立ち上がってキッチンに向かうと、新しいお皿を1枚持ってソファーに戻ってきた。 テーブルの上にあるプリンが乗った2個のお皿を遠くに避け、新しいお皿を私の目の前に置く。そして3個目プリンの蓋をあけて、もう一度私に手渡した。 「コツを掴めば簡単なんだ。もう一回やってみろ」 目尻を下げて優しく微笑まれ、はいと頷く。 私はもう一度、プリンの表面をスプーンで軽く押さえたあと、お皿の上にプリンを逆さにして置いた。 お皿とプリンをしっかりと固定して持ったあと、ふぅーと深呼吸をする。 「2回目に振った強さだぞ」 横からの部長の声に頷くと、強さを考えながらお皿とプリンを振った。お皿をテーブルの上に置き、プリンのカップを揺らしながらそっと上に持ち上げる。すると、ストン──と綺麗な山型のプリンが落ちてきた。 「あっ、できた! 部長、できました!」 嬉しくて部長に満面の笑みを向けると、「よかったな」と笑いながら頷いてくれた。 「ほんとにすごいですね。こんなに綺麗にプリンが出てくるなんて!」 「なっ。俺の言ったこと本当だっただろ? 白石は全く信じてなかったけど」 どうだと言わんばかりの得意げな顔を私に向ける。 「だってほんとにプリンが綺麗に出てくるなんて思わなかったですもん。信用してなくてすみませんでした」 素直に謝ると、「出したプリン、ちゃんと2個食って帰れよ」と、今出したプリンの横に、先ほどの少し崩れたプリンを置かれてしまった。 わかりました──と返事をしてまずは綺麗に出せたプリンのお皿を手に取る。 目の前で揺れている綺麗な山型のプリンを見て笑みを浮かべたあと、その山を崩すようにスプーンで掬った。
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