レッスン開始

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部長がゆっくりと目を開けた。 「茉里、キスしたのか? 俺は全然分からなかったけど」 「う、うそっ。したよ。ほんとに、ほんとにしました。ちゃんとキス、しました!」 「おかしいな? 全然気づかなかった」 部長は本当に分からなかったのか、首を傾げている。 確かに唇が触れたと思ったけれど、もしかしたら緊張しすぎていたせいで、私の勘違いだったのかもしれない。 部長の様子を見ているとそんな気がしてきた。 「じゃあ、もう一回やってみてくれるか? ただし、キスというのは相手の唇の感触を感じないとキスとは言わないからな」 部長の言葉にコクンと頷く。 さっきから怒涛のごとく激しく鳴り響いている心音がうるさくてたまらない。その音を落ち着かせるように、私は大きく深呼吸をして息を吐いた。 そしてそのままゆっくりと部長の唇に顔を近づけ、さっきよりも少し長く唇を重ねた。温かい唇の感触が重ねた場所からやんわりと伝わっくる。 ドクン──と痛いくらいの音を立てた心臓の音にびっくりして唇を離すと、部長が静かに目を開いた。 「うーん、今のは、高校生の初めてのキスってとこだな」 「こっ、高校生のキス、ですか?」 「ああ、今のは高校生のキスだ。茉里、次は大人のキスをしてみろ。どんなのでもいいから。俺がこの間したようなキスでもいいし、茉里が思う大人のキスっていうものをしてみるんだ」 今のキスだけでも私の中で200%くらいの力を出してしたっていうのに、大人のキスって……。 これ以上のキスってどうしたらいいの? この間の部長がしたようなキスなんてできないし……。 口の中に舌を入れるようなキスなんて私には絶対に無理だ。どうしたらいいものかと考えていると、急に腰にまわされた手に力が入り、部長の方へさらに引き寄せられた。 「茉里? できないと3ヶ月なんてすぐ経ってしまうぞ」 一段と距離が近くなったうえに、またしても “3ヶ月なんてすぐ経つ” と言われ、はい、と頷く。 「悠くん、もう一度……、もう一度目を瞑って……」 じっと見つめられている瞳に向けて、緊張でいっぱいになりながら小さな声で呟く。 部長は素直に目を閉じてくれた。
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