悠樹side #4

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理由を聞くと、恋愛が上手くいかないのはこの真面目な性格が原因で、その “真面目” という言葉を俺に言われると、ますます自分に自信がなくなるということだった。 俺からしてみれば、そんな自信をなくすようなことではないと思うのに。 確かに真面目な性格が一部災いしているかもしれないけれど、結果的にそれは自分を大切にしているということだし、すぐに男と関係を持つような女より全然いい。 そのことを伝えると、「部長はいいですよね。いろんな人からモテるから。福岡でも女性の方たちから声をかけられていましたもんね」 とむくれたような声が返ってきた。 俺がいつ福岡で声をかけられていたというんだ? 一瞬、偶然出会ったあの麗香のことが頭をよぎる。 「えっ? 俺が? いつ?」 「屋台でごはん食べてたときです。隣に座っていた女性から声をかけられてましたよね? モテる人は違う、さすがだなって思いました」 屋台の時? そう言われて思い出した。確か隣に座った2人組の女に、「何が美味しいのか」みたいなことを聞かれたような気がする。 白石に言われるまですっかり記憶から消えていたが、声をかけられたとき、正直面倒くさい女だなとは思った。 こっちは会社の部下とはいえ、女性と一緒に屋台に来ているのだ。そんな女性連れの男に対して普通話しかけてくるか? と腹が立ったことだけは覚えている。 あの時の光景を思い出したことで、俺はあのときもうひとつ腹が立ったことを思い出した。 白石は自分はモテないと思い込んでいるけれど、こいつは自分がモテてることに気づいていないのだ。 現に部下の吉村が好意を寄せていることは未だに気づいていない。 そして、あの屋台でも店員がチラチラと白石の顔を見ながら料理をしたり、他の客より話しかけていたのを全く気づいていなかった。店員とはいえ、カップルで来ている客の女にチラチラ視線を向け、ニヤニヤとした顔で話しかける姿になぜか腹が立って仕方がなかった。 今まで付き合ってきた彼女と一緒にいた時は、そんなことをされても腹が立つなんてことは一度もなかったのに──。
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