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はっ?
俺は白石の顔を見つめたまま、動作から思考、表情まで全てが停止し、固まってしまった。
たった今、耳に聞こえた言葉を思い出す。
今、こいつ俺に何て言った?
い、今のは俺の聞き間違い……じゃないよな?
せっ、セックス?
セックスの練習だと?
お、俺にそう言ったんだよな?
当の本人はものすごく真面目な表情で俺の顔を見つめている。
「白石、お前正気か? 自分が今何を言ったのか分かっているのか?」
「はい。私は初めてなので部長が上手いとか下手とかわかりません。色々試してみて、お互いの未来の相手のために練習しませんか?」
そういう問題じゃないだろ。
お前、ほんとに何を言ってるんだ。
「付き合うわけじゃないんです。ただの練習相手です。後腐れないし、部長も次の彼女と付き合ってまた下手だと言われないように練習しておくのはいいと思いませんか? 次にまた下手だと言われたらもう立ち直れないと思いますよ」
冗談か?
いや、冗談でこんなことをいう奴じゃない。
真面目ゆえの、無知ゆえの言葉なのか?
一気に酔いが覚めた気がして、自分の気持ちを落ち着かせるように「そんなに下手下手と連呼するな」と反論してみる。
まったくおとなしい顔をして何を言い出すのかと思ったら。こんな大胆なこと言いやがって。
俺だからまだよかったようなものの、他の男だと本気にするぞ。
俺がそんな心配していることなんて全く気づいてないのか、白石はどれだけ自分がベストな相手かということを俺に説明し始めた。
「自分で言うのもなんですが部長にとってはベストな相手だと思いますよ。私、経験ないから比べる人がいないですもん。私ももう27ですし、これから誰かと付き合うにしても初めてだと不安なんです。部長が練習相手になってくださるのでしたら、素性も知れてるし安心ですし」
俺が練習相手だと素性もしれてるし安心だと?
ここは男として喜ぶべきことなのか。
いや、これは恋愛感情も何もない、ただの練習相手だ。
男と見られているわけではない。
「だからと言って、じゃあ練習しようかと俺が返事できるわけないだろ。お前は部下だぞ。部下に手を出せるわけがない」
「付き合うわけじゃないんですよ。私だって身体の関係を持ったからって誰かに言うなんてことしないし、訴えることもしません。本当に単なる練習相手です。心配なら誓約書でも書きます。いい提案だと思いますけど」
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