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地下鉄の入り口まで来て階段を下りていると、後ろにいる白石が慎重に階段を下りていた。振り返って調子が悪いのかと尋ねると、ちょっと酔っぱらったみたいで足に力が入らなくて、と俺に大丈夫だとジェスチャーするように両手を出してきた。
「ほら、手を貸せ」
俺は無意識に前に出されたその手を掴んでいた。
「危なっかしいな。落ちるなよ。っていうかタクシーで帰るか? 家はどこだ?」
「ほ、ほんとに大丈夫です。上野なんで電車の方が早いんです」
えっ? 上野?
こいつ、上野に住んでいたのか。
俺と一緒じゃないか。
どういうわけか、もう少しこいつと一緒にいれると思うと嬉しく感じる俺がいた。
決して好きと言う感情があるわけではないのに──。
きっと白石があんなこというからだ。
あの発言から俺はどうもおかしい。
俺も上野に住んでいるというと、白石はびっくりしたように目を丸くして俺を見つめてきた。
可愛い顔だよな──。
不覚にもそんなことを感じてしまい不自然に目を逸らしてしまう。
ほんとにどうしたんだ。
俺は部下を目の前に何を意識してるんだ。
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