一晩明けて

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確かに昨日はそう思った。 あの時はそう思っていた。 それは事実だ。 部長が練習相手になってくれるのであれば、私の27歳まで抱えてきた不安が少しは取り去られるのではないかと。 部長にとってもメリットになるんじゃないかと。 でも、部長には私の提案を断られてしまったのだ。 あの発言は間違いなく恥ずかしいけれど、断られてしまったことはもっと恥ずかしいし、ショックだし、それに惨めでもある。 あーあ、あんなこと言うんじゃなかったな。 部長はどう思ってるんだろう。 肉食女子? 淫乱? セックスがしたい女? そんな風に思われてたらどうしよう……。 どんどん自分がはしたなく思えてきて、もう考えないようにしようとスマホを取り出して好きなアーティストのインスタを開いては見たものの、全くインスタの内容には集中できず、部長にどう思われてしまったのだろうかという思いが頭の中から離れない。 明日、部長に会いたくないな──。 そんな風に思ったところで、部長は上司だ。 朝、会社に出社すればいつも通り自分の席に座っているはずだ。 明日はとにかく何事もなかったかのように振舞おう。 会社で謝るなんてことはできないもんね……。 そう何度も自分に言い聞かせて暗示をかけながら日曜日が過ぎていった。
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