一晩明けて

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「そ、そんなこと思わないよ。そういうのはイケメンだからとか遊びでするもんじゃないでしょ」 そう答えながら、土曜日に自分が部長に言った発言を思い出してしまい、動揺していることを気づかれないようにタルタルソースのかかったアジフライを口に運ぶ。 アジフライにはタルタルソースより、お醤油の方が好きなんだけどな、なんて思うけれど、だいたいアジフライにはウスターソースかタルタルソースだ。必死で平静を装いながら身がふっくらとしたサクサクなアジフライをいつも以上に咀嚼していると、じとーっと見るような視線が目の前から飛んできた。 「彼氏は彼氏だけどさ、あんなイケメンに抱かれるなら1回くらいいいって思うじゃん。常務みたいな顔だったら私も絶対に絶対にそんなこと思わないけど、あれだけのイケメンだよ」 目を輝かせながら話す葉子に「葉子さん、それ笑えるー。常務だったら私も絶対に嫌だ。あの親父臭が漂いそうなギラギラした顔……」と若菜ちゃんが本当に嫌そうな表情をして顔を歪める。 確かにギラギラした顔してるけど、そこまで言わなくても……。 「だよね、あのギラギラした顔で『もう少しこっちにこないか』とか言われて、毎日一緒に寝るなんて私絶対にあり得ない」 「きゃあ、絶対にやだー。もう想像しただけで気持ち悪いですよー」 葉子と若菜ちゃんがきゃっきゃと盛り上がっていると、「ここ、空いてるかな?」と頭上から低い声が降ってきた。
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