一晩明けて

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再び心臓がドクンと大きく反応し、その瞬間、啜っていたお味噌汁が気管に入り、途端にむせ込み始める。 「茉里、大丈夫?」 心配そうに顔を覗き込む葉子の言葉と一緒に4人の視線が一斉に集まり、うんうんと頷きながら真っ赤になってお茶を飲んで胸元を抑える。 もう、なんでこんなときに気管に入るの。 よりによって部長たちの前で……。 恥ずかしさでいっぱいなりながら、ようやく咳が落ちついたところで、「悠樹が急に話しかけるからだろ。白石さん、ごめんね」と水島部長が申し訳なさそうな顔を向けてきた。 「だ、大丈夫です。すみません」 胸元を抑えたまま無理矢理笑顔を作り、小さく深呼吸を繰り返して呼吸を整える。 まだあとアジフライがひとつとその横に添えられたキャベツ、そして白米が少し残っているけれど、早くこのテーブルから立ち去りたい。 これ以上松永部長の隣に座っていると、また恥ずかしい失態をおかしてしまいそうだ。 だけど葉子も若菜ちゃんもまだ食べている途中だし、ひとりで先に食事を終えることもできないし……と思っていると、「水島さん、俺、先に会議室に行きますよ」と食事を終えた松永部長がトレイを持って立ち上がった。 葉子と若菜ちゃんの視線が松永部長に移り、残念そうな表情へと変わる。 「なんだよ悠樹、冷たいな。待ってくれよ」 水島部長は残りのごはんを口に掻き込むように入れると、私たちに「色々ごめんね」と言って立ち去っていった。
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