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「えっ? 眉間に皺寄ってる? おっ、お昼からの仕事の段取りを考えてたからかな」
慌てて口元を緩めて、変に勘繰られないように笑顔を作る。
「茉里はなんか知ってたりする? 水島部長と松永部長が昔から知り合いだったとか?」
葉子の質問に、知らないと首を横に振りながら答える。
そもそもさっきはそれどころじゃなくて、水島部長が松永部長のことを下の名前で呼んでたのさえ気づかなかったもん。
「茉里は結構冷静だよね。実はなんか知ってて隠してることがあるんじゃないの?」
「なっ、何も知らないよ」
「ほんとぉ? だいたいあんなイケメンな部長たちを目の前にして緊張しないのが怪しくない?」
冗談っぽくニヤニヤとした笑顔で見つめてくる。
葉子のこういう勘は本当に鋭い。
ここで動揺なんかしたりすると絶対にバレてしまいそうだ。
「きっ、緊張したよ。だからお味噌汁が気管に入っちゃったじゃん。だいたい葉子があんな話をしてたせいでもあるんだからね。本当にドキドキだったんだから」
わざと大袈裟に緊張したとアピールをしてみせる。
ドキドキは別の意味のドキドキだけど……。
「ごめんごめん。ちょっとからかってみただけ。茉里って天然の真面目ちゃんだから面白いんだもん」
「てっ、天然の真面目ちゃんって、なにその変なネーミング」
「いつも真面目で一生懸命なのに、天然で可愛いってこと。これは褒めてるんだからね! だいたいさ、こういうあざとくない天然女子が一番怖いんだよ。ああいうイケメン男子の心を簡単に奪っちゃうんだもん。ねぇ、若菜ちゃんもそう思わない?」
「そうですよね。茉里さんって自分がモテてることに全く気づいてないし、行動も発言もほんとに天然だから見ててつい笑っちゃったり」
「ほんとだよね。茉里本人は真面目に計算なく天性でやってるからなぁ。素直に可愛いって思っちゃうんだよね」
「ちょっと葉子も若菜ちゃんも何言ってるの。さっきから人のこと好き放題言って。だいたい私はモテないし天然なんかじゃないですー!」
まったく──。
モテてたらとっくに彼氏だってできてるし、こんなに悩んでないってば。
「茉里はほんとわかってないなぁ」
「自分が一番よくわかってるよ。それより葉子、社食ではもうあんな話は絶対に禁止だからね!」
「はいはーい」
葉子は楽しそうに、じゃあまたねと手を振って経理部のフロアへと戻っていった。
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