予定外の週末

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「大丈夫か? 今のはかなり痛かっただろ?」 そこには上半身を起こして心配そうに私を見る部長の姿があった。 ぶっ、部長が起き、てる……。 「あっ、あの、えっと、その、あの、えっと……」 起きて私を見ている部長を目の前にして、驚きのあまり言葉が出てこない。 部長の家に勝手に入ったこと、帰るつもりだったのにいつの間にかここで寝てしまっていたこと、謝らないといけないことがたくさんあるというのに──。 そんな状態の私を見て部長はクスッと小さな笑みを浮かべると、おでこを押さえている私の片手を外し、覗き込むように顔を近づけてきた。 いきなり顔を近づけられ、硬直したまま身動きが取れなくなってしまう。 「ぶつけたのが目じゃなくてよかったけど少し腫れてるようだな。これは痛いだろ。冷やすか? っていうか、白石はいつもあんな風に飛び起きるのか?」 優しくおでこに触れられながら目の前で綺麗な顔をした部長にそう問いかけられ、私は口を閉じたまま首を横に振った。 さっきは部長の部屋だということを思い出したから飛び起きただけで、いつもこんな風に起きるわけない。じんじんとおでこが痛かったはずなのに、痛みよりも心臓のドキドキとする音の方が痛く感じる。 それより部長は私が部長の部屋にいることを何も思わないのだろうか。 「あっ、あの部長……」 「んっ?」 「かっ、勝手にお家に入って本当にすみませんでした。ごめんなさい」 私は正座をしておでこがラグについてしまうくらい頭を下げて謝った。 「きっ、昨日、風邪薬と冷却枕を持ってここに来たとき、ドスンって何かが落ちるような音がしたんです。呼んでも返事がなくて、それで気になって部屋の中に入ったら部長が倒れてて……。少し様子を見たら帰るつもりだったんです。なのに気づいたら寝てしまっていて……。本当に、本当にすみません。部長のお家に入ったことは絶対に誰にも言いませんので……。ほんとにごめんなさい」 理由はどうであれ、部長の許可なく勝手に部屋に入るなんて許されることではない。これは不法侵入だ。 昨日は部長のことが心配で、後で謝ればいいなんて軽く考えていたけれど、一晩明けてみると何で軽く考えてしまったんだろうと後悔が押し寄せてくる。
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