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「部長、病院ですけどこの近くだと3軒あります。一番近いのは駅前のクリニックです。おそらく行かれないとは思いますが一応お伝えしておきますね」
私の言葉に部長がニヤリと笑う。
「白石、俺が病院行かないってよくわかったな」
「えっ? あっ、だって部長、さっき今日明日で寝てたら治るって言われてたから……。病院に行かれる気ないですよね?」
「ああ。白石が来てくれてなかったら今日は病院に行く羽目になっていたと思うが、多分この感じだと大丈夫だろう」
「じゃあ、何か少し食べられてから薬飲んでくださいね。………あっ!」
冷蔵庫の中にあったものを思い出し、思わず声をあげる。
「なんだ? 何かあるのか?」
部長が突然声を上げた私の顔をじっと見ている。
「あっ、いえ……、あの、部長……、ごめんなさい。昨日薬を飲んでもらうときにお水をもらおうと勝手に冷蔵庫を開けてしまったんです。そしたら冷蔵庫の中にはほとんど食べ物が入ってなくて……。だから何か食べてから薬飲むって言っても何もないなって思ってしまって……。すみません」
確か冷蔵庫の中って、ビールとお水とチーズちくわとプリンしか入ってなかったはずだ。
私が心配することではないけれど、風邪をひいてるのに食べるものはあれだけなのだろうか?
そんなことを考えていると部長が苦笑いを浮かべた。
「普段は会社から帰って来るのが遅いからほとんど家では作らないしな。それに昨日まで出張だったし、そう言われれば何もないな」
「部長、聞いてもいいですか? 部長ってプリンがお好きなんですか?」
「好きだけど。なんか変か?」
なんか変か?と聞かれて、変ですとは言えないけれど、こんなイケメンな顔して真顔でプリンが好きだというなんてなんか可笑しい。似合わないにも程がある。口元を手で押さえながらクスクスと笑っていると、何がそんなに可笑しいんだと部長が不服そうな顔をして私に視線を向けた。
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