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読み切り作品
天野雪。
一見すると女の子のような名前をしているが、
実は近くの高校一の不良だった。
金髪でピアス穴がたくさんあいていて、よく屋上でタバコを吸っていた。ただ見かけによらず優しくて。
常にそのまわりでは笑いが絶えなかった。
僕の幼馴染、で
本当はずっと好きだった人。
ついに俺も結婚したんだ。
久しぶりに再会した友人はいつの間にか黒髪に代わっていて、優しくてまぶしい笑顔でそう言った。
そっか。
俺の顔は見せられないほど引きつっていて、慌ててマフラーで隠した。
「好きだったなぁ。」
戯言のように死ぬ直前につぶやいたのがそれだった。
白い息が雪のようで、綺麗だ。
ゆっくり一度深く息を吸う。後悔はない、と思う。
飛び降り防止の柵を乗り越え目を閉じ、そっと足を地から離した。
さよなら冬。
《ただいま入ったニュースです。20代男性が大手広告会社のビルの屋上から飛び降りたそうです。現場の状況からして自殺と見られています。また、その人を助けようとした人がいたようです。…たった今、助けようとした20代男性の天野雪さんの死亡が確認されました。》
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