読み切り作品

1/1
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

読み切り作品

天野雪。 一見すると女の子のような名前をしているが、 実は近くの高校一の不良だった。 金髪でピアス穴がたくさんあいていて、よく屋上でタバコを吸っていた。ただ見かけによらず優しくて。 常にそのまわりでは笑いが絶えなかった。 僕の幼馴染、で 本当はずっと好きだった人。 ついに俺も結婚したんだ。 久しぶりに再会した友人はいつの間にか黒髪に代わっていて、優しくてまぶしい笑顔でそう言った。 そっか。 俺の顔は見せられないほど引きつっていて、慌ててマフラーで隠した。 「好きだったなぁ。」 戯言のように死ぬ直前につぶやいたのがそれだった。 白い息が雪のようで、綺麗だ。 ゆっくり一度深く息を吸う。後悔はない、と思う。 飛び降り防止の柵を乗り越え目を閉じ、そっと足を地から離した。 さよなら冬。 《ただいま入ったニュースです。20代男性が大手広告会社のビルの屋上から飛び降りたそうです。現場の状況からして自殺と見られています。また、その人を助けようとした人がいたようです。…たった今、助けようとした20代男性の天野雪さんの死亡が確認されました。》
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!